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「日本は、最終製品メーカーの中で、また重要な存在になる」

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「日本は、最終製品メーカーの中で、また重要な存在になる」

研究者マシュー・ブラマー氏は、日本は今後数年で技術リーダーとしての立場を強めるだろうと考える。

日本のイノベーションの特徴は何だと思いますか。
お答えする前に、笑い話をひとつ紹介します。一緒に猛獣狩りをしているアメリカ人と日本人がいました。二人がジープから遠く離れて写真を撮っていると、ライオンに狙われていることに気づきました。すると、日本人はブーツを脱いで、バスケットシューズに履き替えました。アメリカ人は呆れて尋ねました。「バスケットシューズを履いても、ライオンより速く走ることはできませんよ」。日本人はこう答えました。「ライオンより速く走る必要はないですよ。あなたより速く走ればいいだけですから」。この話のように、我々アメリカ人にとって、イノベーションとはライオンより速く走ることを意味します。これを「破壊的イノベーション」といいます。一方、日本人にとって、イノベーションとは競争相手より速く走ることを意味します。これを「連続的イノベーション」と呼びます。もちろん、粗雑な一般化ではありますが、真実を含んでいます。こうした特徴は、イノベーションを主題としたあらゆる文献に見出せます。

日本企業は、最終製品を作る能力を失いつつあり、存在感を増しているのは、部品製造分野であるように見えます。最終製品を管理できないわけですから、先端産業の将来の進化をもう制御できないというわけです。これは危機でしょうか。
確かに、日本の最終製品生産(組み立て)は過去と比べて少なくなっていますが、これは日本に限らず大きな工業国すべてに言えることです。それによって工業国のイノベーション能力が危うくなるわけではありません。少なくとも1990年代以降、生産システムのグローバル化が新興国に有利に、先進国に不利に働いてきました。そうした傾向は、例えばマクロ経済統計にも顕著で、2012年に、世界全体のGDPに占める新興国の割合が先進国を初めて超えました。明らかに多くの産業が最終生産地を海外に移していますが、これは世界中のどの国でも同じことです。グローバル化した生産システムが大きく変わりはしましたが、先進国においては一人当たりの価値生成の点で常に新興国に先んじていることに注目しておくことが重要です。言い換えれば、富の創造は世界全体で増加していますが、先進国でいっそう増加傾向にあるのです。
イノベーションに関していえば、最終製品生産の低下が日本のイノベーションの阻害要因になるとは、必ずしも私は思いません。特に、日本が伝統的に連続的イノベーションと競争的優位を志向する傾向があることを考えると、そう思うのが普通です。今日のイノベーションの大部分は交換用部品のレベル、とりわけ日本の産業機構が軸足を置いているサービスとデジタル技術の分野で起こっています。日本も他の工業国同様、先進国に生産を回帰させる「インダストリー4.0」と呼ばれるものにより、最終製品メーカーの中での地位を取り戻していくように感じます。ロボット工学は、生産様式を根本的に変え、それにより労働市場を変容させ、生産を常に低コストの国々へ移す方向へ導いてきた経済の論理をひっくり返そうとしています。このような「リローカリゼーション(地域回帰)」が最初に現れるのはテクノロジー分野ですが、間もなくあらゆる経済セクターで見られるようになります。例えば、アディダスは、中国の生産工場を閉鎖し、第一級の労働者500名を解雇して、ドイツでの衣料の生産を拡大しました。これを私は「レトロ・グローバリゼーション(逆グローバル化)」と呼んでいます。

日本企業には、独自のイノベーション様式がありますか。
確かに「日本式」のイノベーションは、他の国とは異なります。しかし、どの国もイノベーションに関して独自性があるものです。言い方を変えれば、国ごとに独自の文化的、歴史的、地理的、政治的、経済的な条件があるわけで、それらが補い合って、他にない「その国のイノベーション様式」が形成されるのです。気を悪くされるかもしれませんが、もっと言ってしまうと、イノベーションを仕事とする日本の企業、大学、政府機関に固有の独特な特徴など、ごくわずかしか、あるいはまったくないとも言えます。つまり日本を独特なものにしているのは、個別のファクターというより、ファクターの組み合わせなのです。特定の時点におけるイノベーションへの欲求を国の特徴から説明することはできますが、そこからいつの時代も当てはまる規則を抽出することはできません。
日本の本質的な特徴といったものを強調する人もいますが、それは本当でしょうか。「コンセンサスの文化」は韓国にもありますし、年功序列はインドでも一般的で、世界中の企業が「長期的計画」を立てようと努めています。「日本独自」といわれる終身雇用でさえ、労働人口の約20%の人にしか関わりのない話です。終身雇用が見られるのは、主に公共部門と巨大コングロマリットで、その重要性は年々減少しています。安倍政権は日本型モデルの「悪しき」特徴と手を切るための機構改革及び構造改革を打ち出しました。したがって、日本企業で働くことで、多くの独特な経験がもたらされるとしても、私は、そこからイノベーションについての結論を引き出すことはしません。

日本企業は中韓の競合他社に対する優位性を維持しているでしょうか。
テーマを明確にする必要があります。品質競争力の点では、一般的にいって日本が相変わらず中国・韓国に先行していることは確かです。価格競争力の点では、三か国は同等で、おそらく中国が優位にあります。しかし、中国企業と日本企業を同一の平面に置くことは、主に背景の問題でためらわれます。日本が地方分権の進んだ民主国家で自由競争がなされているのに対し、中国政府は中央集権的かつ独裁的で、経済を統制しているからです。日本は、透明性のある法治国家としての責任があるために、長期的な優位性を維持しています。

あなたが日本の首相であったとしたら、イノベーションを刺激するために何をしますか。
私なら「創造的破壊」を産業・通貨政策として行います。例を挙げると、多くの高級官僚はしっかりした科学知識を持っていますが、企業組織の中でその知識を活用していません。一方、日本の産業は、概念操作を知らない企業経営者により運営されています。この二者の間には、ごくわずかの対話しかありません。私が首相なら、最も優秀な高級官僚と最も優秀な企業のトップを「交わらせる」試みをするでしょう。例えば、優秀な官僚を企業に派遣する、彼らに事業を起こすための資金を提供する、といったようなことです。また、企業家が省庁内にいられるようにします。私は、現在、経済産業省で働いていますが、かつてはウォール街で働いていました。国と産業界は互いにもっと頻繁に話し合うべきだと思います。

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