欠かすことのできないプラスアルファ

揺れ動く世界の高級ブランド市場にあって、抜群 の安定性を維持し続ける日本。日本人顧客は世界 の高級ブランド業界が享受する戦略的原材料だ。

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流れに逆行

成長が止まった国、さらには凋落の道を辿る国というイメージを持たれがちな昨今の日本。だが東京の街中を数分も歩けばそんな考えはたちまち吹き飛んでしまうだろう。自由が丘に吉祥寺、そしていずれは池袋も…… おしゃれなは日々その姿を変え、さらに新たな界隈が次々と整備されていく。高級品と聞いてまず思い浮かぶのは銀座だが、高級ブランドのメッカとして知られるこの街は昼夜を問わず多くの人で賑わっている。昼間は雰囲気こそ異なるがその高い購買力で肩を並べる2つのグループ、すなわち日本人常連客とアジア諸国からの観光客(多くは中国人)が高級店を片っ端から巡り歩く。日が暮れると今度は何十台もの黒塗りのリムジンが列をなし、あたりにエンジン音を響かせる…… 高級クラブで杯を傾け、三ツ星レストランで舌鼓を打つご主人のお帰りを待っているのだ。そんな光景には数字の裏付けもある。本稿の執筆にあたり高級品部門における日本市場のシェアを尋ねたところ、誰もが判で押したように同じ数字――世界市場全体の10%――>を口にした。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーによる高級品部門の世界トレンド最新調査によると、日本は市場規模で世界全体の9%を占め、また世界の高級品購買層の実に11%が日本人だという。つまり日本人の高級品に対する忠誠心は他に類がないほど高く、欧州で頻発するテロ事件、米国の政治的混乱、そして英国のE U 離脱など様々な危機的状況や経済不安が世界各地を揺るがす中、この国の市場だけは盤石の安定性を保っているということだ。安倍首相の主導するテコ入れ策にも関わらずデフレ脱却は夢のまた夢という状況下、この部門だけは例外的な好調ぶりを誇示しており、その勢いはむしろインフレ傾向に振れるほど。2 0 1 6 年、東京の高級品・サービス価格は2 . 4 %もの価格上昇を記録した。目につくところではビジネスクラスの航空券が+35%、ホテルのスイートルームも+13%と大幅な伸びを示している(ジュリアス・ベア銀行調べ)。

分かれ道

だが実際のところ、こうした状況もそろそろ岐路にさしかかろうとしている。このセクターの動向を追っているCBRE社のシャノン・ニシマツ氏は、「まだ向こう数年間は今の安定した状態が続くでしょう」と断言する。日本には地元の顧客層が充実しているという他国の市場にはない強みがあるからだ。「日本の高級品市場には4種類の顧客がついています。まず購買力が最も高い戦後生まれのリタイア世代。第二にあまり派手な買い物はしませんが十分な経済力のある40~65歳世代。第三は最新のファッションに敏感な人々、そして最後にOLです。これらの顧客は、たまに大きな買い物をするというよりはこまめにショッピングをする傾向にあります(つまり百貨店やレストラン、ブティック、ホテルなどはリピーターを増やさなければなりません)。そこにプラスアルファとして観光客による購買が加わるわけです。観光客の落とす金額が大きく、たまに高額な買い物をする自国民の支出がこれを補う形のフランスとは真逆ですね!」と、ある業界通は分析する。だが高級品部門のベテランは、長期的に見るとその将来に不安を感じているようだ。「この業界も人口の減少には逆らえません。減少した人口は大都市に集中します。当社も店舗を減らし、大都市中心部に集中せざるを得なくなるでしょう」と、業界の重鎮は避け難い未来への展望を述べた。

申し分のない顧客

日本人はまさに高級品業界最強の切り札である。まず規模の大きさからして別格だ(キャップジェミニ社によれば、アジアに暮らす富裕層の半数以上が日本に住んでいるという)。「世界で、渋谷や新宿、銀座と同じくらいの賑わいを見せている場所を他にご存知ですか? これらの街と同じ売り上げを達成している場所があると思いますか? 私はないと思いますね」。業界のある企業経営者はそう述べた。日本人顧客はその質の高さでも目を惹く存在だ。彼らは非常に洗練されたセンスの持ち主で、無意識のうちに世界市場のトレンドセッターとなっている。ケリング社のシャルル・ド・フルリュー氏は「反ブランド(「NO LOGO」)や手仕事へのこだわりは、この国から発信されたトレンドです」と述べている。日本人は、名の知れた一流ブランドよりも製品そのものの価値に注目しつつあるようだ。彼らがブランドを選ぶ理由は、例えばその確かな歴史や妥協を許さない職人魂にある。「イタリアのスローウェアやカルーゾといった知る人ぞ知るブランドも、その質の高さを武器にここ日本で顧客を獲得したのです」と述べるのは、大きな影響力を誇る雑誌『MONOCLE』の日本特派員フィオナ・ウィルソン氏。彼女も日本はこの部門のカギを握る存在だと言う。 9年前からエルメスジポンの代表取締役社長を務める有賀昌男氏は、「最近大きく変わってきたのは、人々がモノよりも体験を求めるようになってきたということです。例えば、弊社では数多くのイベントを開催しておりますが、招待状ではイベントの内容はあえて曖昧にしています。というのも、私どもとしてはイベントで一体何が待ち受けているのか、わくわくしながらお越しいただきたいと思うからです。内容も招待客も事前にわかっているイベントは多いのですが、エルメスはサプライズが大好きなのです」と打ち明けた。

流行に敏感

長きにわたり高級であるという事実のみを重視してきた日本人顧客だが、今彼らの視線は流行にも向けられている。マッキンゼーの調査『FASHIONSCOPE』によれば「2025年までは東京やロサンゼルス、ニューヨークなどがモード界の主要市場トップ10の座を守る」とのこと。カリスマデザイナー阿部千登勢が創設したミニマリストなブランド『SACAI』は、大手ブランド品の所有者を自分の方に振り向かせた。「変幻自在なバッグ、バオバオ・イッセイミヤケの成功は、彼がソニア・リキエルと同世代のデザイナーであることを考えれば実に驚くべきことです」と、フランスのとある有名ブランドの日本代表は語る。「人々の関心は、高級品から他と一味違う最先端のモードへと移ったのです。日本に着想を得ているデザイナーは山ほどいますよ」と述べるのは、ロンシャン・ジャパンの手綱を握るニコラ・シトボン社長。日本人顧客は、同氏率いるブランドの独創性と「本物」の手応えを高く評価しているようだ。逸品を求める顧客一人ひとりの中に芽生えた「体験」への希求――真似ることのできないその強力な武器を、近い将来日本が失うことは考えにくい。「今、業界では製品そのものよりも『体験』という言葉が優先されます。その良い例がピエール・エルメです。彼がスイーツそのものについて語ることはありません」と、ある高級ブランドの幹部は述べている。同氏は控えめな店構えながら味には定評のある青山通りの蕎麦屋「みよた」を例に挙げ、出てきた千円のランチの驚くほど大きな魅力について語った。「味はもちろん盆や器の美しさ、サービスの質なども申し分ありません。高級ブランドやホテル、レストランなどがその顧客との間に結ぶ特別な関係――『高級』の神髄はここにあります。ランチはいつもここに来るんですが、日本がこのような顧客関係を醸成するノウハウを手にしている限り、この国だけは高級品のメッカとしての地位を守り続けるでしょう」。

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