モーリス・レノマ、 日本に新たな装いを

あるフランスブランドの日本伝説

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モーリス・レノマ

© Archives presse Renoma

レノマの名声
「レノマと聞いて、知らない人などいないと思います」と、ある30代のアラサー女性は答えた。このフランスのブランドは、フランスから遠く離れた日本でかなり浸透しているようだ。日本におけるレノマの歴史を語るなら、数多くの逸話を生んだ自由な発想と才能の類稀なる融合に触れないわけにはいかないだろう。

話は50年前、日本が急成長していた時代に遡る。先達の途方もない復興への努力を経て、戦後生まれの世代は臆することなくネクタイを緩め、欧州のファッションやライフスタイルに飛びついた。柴田良三もその1人だ。シャネル日本法人のリシャール・コラス社長はこう振り返る。「彼はこの業界の先駆者で、彼が立ち上げたアルファ・キュービック社は高級ブランドを扱ういわば小さな『商社』のようなものでした」。異彩を放つこの人物は、ファッションとラグビー、そして女性たちをもっと自由に愛することを願い、証券会社でのキャリアを投げ打って思い切った賭けに出た。柴田は開拓者の上陸に先駆けて火付け役となった無名戦士の一人であり、日本におけるフランスブランドの成功に大きく貢献した人物である。「彼と似た役割を担った人物として、先日96歳で亡くなった茂登山長市郎が挙げられます。彼は自身の会社、サンモトヤマを通じて1950年代から大手ブランドの製品を欧州で買い付け、他に先んじて日本に紹介しました。まだ為替管理が行われていた頃の話です。高島屋日本橋店を皮切りに百貨店の『特選売場(高級品フロア)』というコンセプトの創出にも関与した彼は、長きにわたり日本ファッション界の『親分』とみなされ、高級ブティックが立ち並ぶ銀座並木通りに君臨していました。とにかくユニークな人物でしたね」と語るのは、LVMH のエマニュエル・プラット氏。
欧州を車で横断した柴田良三はイヴ・サン=ローランと出会い、彼を日本に招聘する。ただ招いたというだけではない。1970年、柴田は青山にサン=ローラン リヴ・ゴーシュのブティックをオープン(毎日夜中の0時まで開店!)したのである。これは日本で初めてブランド名を冠した路面ブティックだった。外国ブランドの指定席、並居る百貨店が目と鼻の先というかなり思い切った立地である。店の成功が全国レベルになると、今度はサン=ローランブランドの製品をライセンス生産して百貨店で販売する。その後も他の欧州ブランドを輸入するが、彼が前面に押し出したのは各ブランドが身に纏うライフスタイルであり、鼻の上に黒縁眼鏡を乗せた「キャンティ族」たる彼の存在もそんなスタイルを体現していた。麻布の最先端イタリアンレストラン「キャンティ」に集う当時のハイソな常連客の一員だった彼は、やがて自身のブランド「アルファ・キュービック」を立ち上げる。

レノマ、爆発的な成功
だが最大の成功は、柴田が同志とみなしたモーリス・レノマとの協力関係によるものだった。日本でブランドを立ち上げるにあたり彼らは2組の著名人カップルのどちらを選ぶかで迷ったという。フランソワーズ·アルディ&ジャック・デュトロンか、あるいはセルジュ・ゲンスブール&ジェーン・バーキンか。最終的にはモーリス・レノマが押す後者に落ち着くことになった。「当時のセルジュは、後に大ヒットするレゲエアルバムの前で人気も今一つでした。私はセルジュの日本初となるコンサートを大きな映画館のホールで開催したのですが、埋まったのは前列の方だけ。実に奇妙な感じでした、日本人の観客は戸惑い気味にぱらぱらと拍手するだけで、歓声を上げるようなこともなかったのです」と、レノマ氏は当時を振り返る。彼ら二人は10年にわたり毎年2週間を日本で過ごした。「セルジュは日本が大そうお気に入りでした。日本は英国の次に彼を夢中にさせた国ですね」と同氏。「成田空港に到着すると、高級車が1台ではなく3台待っていて、ロールスロイスにフェラーリ、そしてポルシェの中から好きなのを選べと言うんですよ!朝から晩まで食えや飲めやの大騒ぎです。日本人は我々が面白おかしく過ごすのを眺めて喜んでいました。日本人の夕食は午後6時半なのに、彼らはフランス人が午前0時に夜食をとるのを見て 、フランス人っていうのは誰もがこうなんだと思っていたようです」と、同氏は楽しそうに語った。その後、レノマは日本国内に2000ヵ所もの売り場を展開することになる。レノマ氏の活き活きとした語り口は衰えを知らない。「私なぞまだまだひよっこですよ」。御年77歳、一体何度目になるのかすらわからないほど重ねた訪日旅行から帰路についた。ただ今回の旅は悲しいものとなった。日本の唯一無二の親友は約束の場所に現われなかったのだ。「東京で飛行機を降りたときに柴田さんの死を知らされ、翌日葬儀に伺いました。千人ほども集まっていたでしょうか、そこに外国人は私一人でした」。そう語る彼の、普段はひょうきんな声が涙で詰まった。「間違いなく、ひとつの時代が終わった」。―石丸淳氏は『GQ JAPAN』誌に寄稿したその素晴らしい記事にこう記した。「柴田氏は、私のような若い日本人にとって憧れの大人でした。ですが今の時代の若者たちは、一体どんな大人の背中を追いかけるというのでしょうか」と石丸氏は憂い顔だ。レノマ氏も「現在わが社の代理人は商社ですがそこには顔がない……昔とは違います。文句はないですよ、そういうものだということです」と認める。ファッションショーは大団円を迎えた。エマニュエル・プラット氏はこう述べている。「偉大な叙事詩、偉大な時代…… しかし不幸にもその偉大な役者はこの世を去ってしまいました」

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