アクセスの時代

L'âge de l'accès

品川は首都東京発展の要衝

新たなスター
「大手町を売って品川を買え」――日本の不動産業界では今こんな言葉が飛び交っている。言い換えれば、都市活動の中心が首都の南部に移っているということだ。品川と言えば、傾きかけた大手エレクトロニクス関連企業グループの本社がある過去の街、今ではもう廃れてしまった都市計画モデルに基づき築かれたかつての「新しい街」というイメージをお持ちでは? しかし今、品川にデベロッパーや建設業者がどんどん集まってきているのは事実だ。「オフィスビルの投資は南へと移ってきています。これは非常にはっきりした流れですね」と述べるのは、JR東日本に務める幹部職員。世界最大の鉄道事業者であるJR東日本は、この地区の再開発工事を牽引する存在だ。その宣伝文句によれば、今は大きいだけで冴えないこの駅も、やがて国内・国際交通インフラの新たな要衝に生まれ変わるのだという。現在、品川は「揺れる」と評判の京急が走る羽田空港への主要な乗換駅であり、東京に2つしかない東海道新幹線の駅の1つでもある。さらにリニア中央新幹線の出発駅もここ品川だ。2027年の開通を目指し政府と鉄道事業者が鋭意取り組んでいるこの磁気浮上 (通称「MAGLEV」)式超高速鉄道の大型敷設事業が完了すれば、名古屋は東京からわずか40分、その後の延伸により大阪へも1時間で行けるようになる。

新たな段階
品川駅のリノベーションに加え、現在JR東日本はここから900 メートルの地点に山手線の新駅を建設中である。1971年以来の新設となる30個目の駅を設計するのは隈研吾氏。現在車両基地として使用されている20ヘクタールの敷地には、オフィスや商業施設、住宅なども立ち並ぶ予定だ。「駅はオリン ピックまでには開業予定ですが、周辺をどう整備していくのかまだはっきり決まっていません」と、JR東日本のある管理職はいささか焦りながらも冗談めかして言った。明治大学の著名な都市政策専門家、市川宏雄氏によれば、この駅の完成はひとつの街の誕生に匹敵するという。
JR東日本が開発の手を緩めることはなさそうだ。次なる目標はやはり同じ地区の浜松町、そして特に竹芝である。ここは伊豆諸島や小笠原諸島、さらにはその他今後の発展が見込まれる観光地に向かう船が発着する場所。こうしてこの世界最大規模を誇る街は、名実ともに鉄道と海上交通のハブとなる。これまで港町としてのイメージがなかった東京は海に背を向け、太平洋に面した地の利を活用することもなかった。「竹芝に高級ブティックと高級ホテルが入る複合施設の建設を予定しています。ビジネス客を呼び込めそうですから。」とJR 東日本は説明している。

森ビル、投資を2倍に
1956年、野心溢れるデベロッパーは、52歳で西新橋1丁目に最初のビルを建設した。彼の名は森泰吉郎。90年代初頭、世界で一番の金持ちになった男だ。25年間続いたデフレーションの後、彼が築きその名を冠した巨大グループは、蓄財の源となった港区を変貌させている。港区は、中心の中の中心。デベロッパーの狙いの心臓部である。港区の住民たちは、2位の千代田区を引き離して、国内最高レベルの収入を享受している。区の現人口は25万3千人。その数は増加の一途で、2028年には30万9千人に達する見込みだ。東京にある外資系企業3100社の内、788社が港区にオフィスを構える。大使館の50%が港区にある。駐在員がひしめき、ラグジュ アリーホテルやインターナショナルな病院がある港区。東京コスモポリタンの代表格新宿を「地上」だとすると、港区のそれは「天上界」だろう。
ここ港区に森ビルは垂直の町を開発中だ。ビルが店舗やオフィス、ホテルや居住スペースを内包する。グループの関心は今、パッとしないビジネス街虎ノ門に向かっている。そこに新しい経済拠点を開発するつもりだ。2014年にオープンした虎ノ門ヒルズに続いて、来年「ビジネスタワー」を、2021 年には「レジデンスタワー」を、そして2022年には「ステーションタワー」をオープンする予定だ。駅を改築するだけでなく、2024年完成予定で麻布台タワーを建設。これらのプロジェクトに連動して、さらに8万人の雇用が生まれ、6000人の住民、400のショップやレストランが地区にもたらされるだろう。六本木交差点5丁目のプロジェクトも忘れてはならない(2025年以降)。この界隈には、赤色がトレードマーク、最終電車に乗り遅れた人たちが夜を明かすことで有名な喫茶店アマンドがある。巨大化する「森」はいつものように、虎ノ門ヒルズでも賭けに出て成功しているようだ。「虎ノ門ヒルズの上層階には面積120m2ほどの40戸のマンションがあり、販売価格は400万ドルです。マンハッタンの価格レベルとほぼ同じ。それでも完売しています」と某アナリストは言う。

新宿:見さげられた町
世界で最大の駅、最も名高いデパートの一つ(伊勢丹)がある新宿は需要のよりどころだ。しかし、渋谷区などと比べると、この地区の展望は芳しくない。「駅の西側にあるオフィス街は、投資不足に苦しんでいます。ビルの大分部は築50年。残念です。人気の三菱地所の新宿フロントタワー以外、めぼしいプロジェクトは殆どありません」と某アナリストは嘆く。人口の10%以上が外国人(20歳人口の20%が外国人!)、東京で唯一本物のコスモポリタン都市新宿は、外国人観光客が最も訪れる地区である。彼らはショッピングのキーパー ソンとなるとき、最も大きな力を発揮する。

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