サムライ債があるではござらぬか

欲求不満気味の日本の投資家達はサムライ債*に癒しを求める。とりわけフランス発の債権に。 

失われた分配金を求めて
「分配金よ、お前はどこに消えてしまったのか...」日本の投資家たちは、ここ20年利率ゼロ、下手したら赤字という状況下でまるで浜に打ち上げられた瀕死の魚のようになりながら、こう嘆いていた。この欲求不満を埋めるものとして今、日本の機関投資家は2007年の金融危機以降、目つけることがなかったサムライ債の魅力に再び惹きつけられている。海外の、特にフランスの金融グループが2014年に円建てで発行した債権が記録的に急増したことが彼等の中で話題にあがっているのだ。2014年上半期だけで、既に2013年同期150%増の1兆5千億円以上のサムライ債が発行された。9月中旬時点でルノー、フランス預金供託公庫、BPCE(Banque Populaire Caisse d'Epargne )などが今年発行したサムライ債の合計が、既に昨年度の発行債権総額に匹敵する。経済アナリストは既に、今年のサムライ債市場が2008年以降、最も活性化した年になると述べている。

投資家の恨み節
好意的に受け取められているかに見えるこの債券市場の再活性化だが、日本の機関投資家のなかには恨みにも似た感覚が生まれていることだろう。彼らは何年もの間、利潤を生む元本の使い道として日本国債の購入を大きな軸としてきた。この債券が保証していたのは僅かな利回りであったが、その分リスクをほとんど負わなくて済んだ。しかし2013年4月、日本銀行は巨大な量的緩和プログラムを打ち出し、このぬるま湯的な因習を転換した。日銀自体が毎月7兆円規模の国債を購入することを決定し、現在、国が発行する新たな債権の70%近くを独り占めしている状況だ。それ以降、市場において他の買い手が債権を購入できる機会はほんの僅かになってしまった。かくして機関投資家は、これまで執着してきた債券購入による収益性モデルが破綻する事態に直面することになったのだ。9月初めに財務省が発行した10年物ソブリン債の利回りは、わずか0.5%に過ぎない。
海外の法人が日本に注目したのは、まさしくこの利子の低さと、日本国内に存在する巨大な貯蓄額の使い道だったのだ。海外の法人組織とすれば、ドルやユーロ建ての市場にのみ依存するのではなく、安くて多様化した市場への金融資源分配を求めていたという事情もある。そして、彼らが日常必要とする通貨を回収するため、日本で得た円を日本国内で売却する際に、外貨交換の費用負担が高くつくとしても、ユーロあるいはドル建てで、同じような金額と償還期間の債権を発行するのに比べて、日本で発行する方が一般的に安くという背景もある。「ウィンウィン(win-win)の関係です」と日本在住の欧州系の銀行家は表現する。
6月には、日産との関係を享受している仏自動車メーカー、ルノーが1,500億円に及ぶサムライ債を発行した。同月、仏銀行ソシエテ・ジェネラルも720億円の債権を販売した。7月、今度はフランス預金供託公庫が総額400億円となる4種類の債権を4つの異なる償還期間(5年、5年半、7年、10年)で発行した。5月には、オランダのRabobankが、年間最高額となる1,003億円の債権発行を行った。評価が高い金融グループや製造業グループの参入に続き、いくつかの外国政府がリスクを取ることに長期にわたって慎重だったこの日本の債券市場に試験的に参入し始めている。7月にはメキシコが600億円のソブリン債を割り当てたが、そのうちいくつかは20年物であった。メキシコはこの債権に2.57%の利率を申し出ているが、この率は日本の投資家の目には巨額に映ることだろう。
*サムライ債 : 海外の国家や機関・法人が、日本国内市場で募集・発行す る円建て債券のこと

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