連載・特集

源泉徴収制度が導入されました

Davy le Doussal et Yasuko Kono

連載「税制・法律講座」は、会員企業の専門家が税制・法律に関するテーマについて解説します。 今回の連載「税制・法律講座」は、TMI総合法律事務所のデヴィ・ル ドゥサール氏(パリ弁護士会所属、東京弁護士会外国法事務弁護士登録)と今野ブデン泰子氏による「源泉徴収制度」に関する寄稿記事です。

2019年1月1日から導入された源泉徴収制度について、フランス国内で、技術者、管理職及び経営者などを被用者として雇用(長期・短期を問わない)する日本企業は正しく理解されているでしょうか。雇用者がフランス国外に所在する場合でも、被用者がフランス税法上の居住者である以上、雇用者は当該被用者に支給される所得に対して源泉徴収を行う義務を負います。また、当該所得が日本にて支給される場合でも同様です。

従って、雇用者である日本企業は、まず、フランスに出向させた被用者がフランス税法上の居住者であるかどうかを確認する必要があります。

給与所得について、日仏間で締結された二重課税の回避のための議定書は、「一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる」と規定しています。なお、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者を意味します。

この点について、フランス一般租税法典第4条Bは、フランス税法上の居住者(条約に別段の定めがある場合を除き、その者の全所得が課税対象となります)を以下の通り定義しています。

    • 国籍を問わず、フランス国内に家庭又は主たる滞在地を有する者
  • 給与所得者か否かを問わず、フランス国内で職業を営む者(但し、フランスでの業務が付随的  である場合を除きます
  •  経済的利益の中心地をフランス国内に有する者

つまり、大抵の場合において、滞在許可を取得してフランス国内に滞在する日本人被用者は、フランス税法上の居住者とみなされることになります。この場合、たとえ給与が日本で支払われたとしても、源泉徴収の対象となります。

具体的には、雇用主である日本企業は、SIRET番号を取得し、管轄フランス税務当局にて登録手続を行い、SEPA決済を行う口座情報を通知することになります。雇用者は、フランス税法に従って、国外の報酬に対する源泉徴収税額の計算を行わなければならず、この際、フランスにて適用される税法上の特別措置(フランス赴任に適用される税制度など)を考慮する必要があります。フランス国内に営業所などの物理的な拠点を有しない日本企業については、納税管理人を予め選任することが必要です。

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