神風の帰還

『太平洋戦争における日本 の神風 (1944-1945)』

桜花は、日本の航空技術革新の歴史に刻まれ ていない。理由は、「桜花(おうか)」が第二次世 界大戦末期、大日本帝国軍が始めた特攻機の最 後の機種の一つだったからである。敵艦隊に激 突することを目的に別機から発射される、800キ ロの爆発物を積んだ木製グライダーだった。パイ ロットもろともに。敗北に追い詰められ、人員に も物資にも困窮した日本軍は、子供のように木 製の刀を振りかざして死ぬまで戦った。

Les kamikazés japonais dans la guerre du pacifique (1944-1945) 『太平洋戦争における日本 の神風 (1944-1945)』の中で、歴史家Christian Kessler (クリスチャン・ケスレー)氏は、世界大戦 史上最悪の出来事の一つ(もし、そう言ってよい なら)を物語る。米軍機の東京到達を阻止するた めに、大日本帝国軍によってつくられた本物の兵 士自滅システム。どの国の軍事史にも志願され た犠牲はつきものだ。しかし、それが大量生産さ れたのは日本だけだった。

クリスチャン・ケスレー氏は、本書で、パイロットの 「同意」という議論の尽きない問題を取り上げ、 当時の日本において、この言葉がいかに曖昧で あったかを示す。軍の完全支配下にあって暴力 に屈し、自由意志は無に帰した。何よりもケスレ ー氏が示すのは、犠牲に同意したパイロットは 非常に若く(前線に散った彼らのほとんどは17 歳以下だった)、彼らの行為は愛国的な理由では なく、むしろ個人的理由にあったということだ。 彼らの残した最後の言葉は、身近な人に向けた ものであり、天皇や祖国に向けたものではなか った。歴史家が数ページに渡って描く犠牲者の 姿に、胸が詰まる。戦闘出発前、彼らは爪や髪の 毛を残していく。自分の死後それらが家族に渡さ れるように。犠牲になる前に形見を準備する。機 体に乗り込んだ時、彼らは既に死人だった。クリ スチャン・ケスラー氏は、特攻の合理性に疑問を 投げかける。この作戦は多くの犠牲者を出した にも関わらず、米軍戦闘機にはかすりもしなかっ た。ナチス政権でさえ、このような戦略は無意味 であると即結論を下している。そして本書には、 初めて特攻隊の操縦マニュアルのフランス語版 が収められている。特別な資料である。

(『太平洋戦争における日本の神風 (1944-1945)』はエコノミカより出版。邦訳無)

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