比較

日本貿易振興機構(JETRO) 理事長 石毛博行氏

外資を引き寄せる日本

JETRO(日本貿易振興機構)は、2017年の対日直 接投資残高(FDI)が29兆円に達し、これまでの最 高額を更新したと発表した。同機構はこの伸びを 歓迎しているが、国の経済規模に占める割合は 依然低い(5.2%)。OECDによれば、フランスへの 対内直接投資はGDPの3分の1を占めている。日 本におけるFDI残高の半分は欧州連合加盟国が 保有し、4分の1は米国が保有している。だが昨今 の潮流として最も目を惹くのは、おそらく対日投 資に占めるアジア諸国の台頭だ。JETROの調査 によると「アジアの残高は2000年比で10.3倍」に 拡大しているという。「アジアは世界でも投資の出 し手として存在感を高めている。国連貿易開発会 議(UNCTAD)の統計によれば、アジアの主要 11 カ国・地域の対外直接投資残高は 2000 ~ 2017 年に 9.2 倍となり、残高の対世界割合は 7.8% か ら17.3% に拡大した。(……)外国直接投資は、欧 米諸国の例で見られるように、地理的・歴史的近 接性が高い国・地域の間で行われる傾向がある。 これらを踏まえれば、アジアの対外直接投資の拡 大はアジア域内の直接投資の活発化につながる と考えられ、アジアからの対日直接投資は今後も 伸びる余地が大きい」 とJETROは述べている。
 

今なお……

日本の生産性は、今も尚低いレベルから脱してい ない。OECD(経済協力開発機構)のランキングで 日本は加盟36ヵ国中17位に甘んじている。同機 構の推計によると、日本国民1人あたりのGDP は4万3301ドル。この数字はフランス(20位)より は上だが、米国(5位)には大きく水をあけられて いる。過去を振り返ると日本は1990年代前半に 「生産性のピーク」を迎えており、この時期には ランキングも6位まで上昇したが、その後の後 退はご存知のとおり。一方、ドイツはまたしても 優秀な成績を収め、この10年で15位から10位に 躍進した。 時間当たりの労働生産性の国際比較では、ラン キングは大きく異なる。日本の就業1時間あたり 労働生産性は47.5ドルで20位だが、この数字は トップのアイルランド(97.5ドル)の半分にすぎな い。米国は6位、ドイツは7位、そしてフランスは 10位にランクインしている。「日本の労働生産性 は(……)米国の概ね3分の2前後で推移してい る」と、これらのデータを公表した日本生産性本 部は述べている。
 

報酬の恐怖、恐怖の報酬

日本企業における役員報酬は、国際 的にはまだ低い水準にある。デロイ トトーマツコンサルティングによれ ば、売上高が1兆円以上の日本企業 の社長が手にする報酬の中央値 は、2018年に9900万円に達したと いう。2015年との比較では大きな 伸び(+34%)を示しているが、 例えば米国の社長はこの1 7 倍、英国の社長は6倍、フラン スの社長は3.4倍など、他国 で得られる給与水準には遠 く及ばない。
 

勉強中

海外で日本語を学ぶ人の数はわずか300万人。こ の数は中国語の10分の1、フランス語の27分の1、 英語と比べるとわずか500分の1にすぎない。
 

派遣の時代は続く

83,808――これは日本の労働者派遣業の事業 所数である。他の経済大国との比較でも抜きん 出て多い数字だ。なにしろ米国でもせいぜい2万 ヵ所(しかも人口は日本の3倍!)、ドイツは7064 ヵ所で、フランスもわずか6500ヵ所に過ぎない。 この数字は、日本の労働市場における派遣労働 の占めるウエイトの高さを示すものだ。労働市 場が以前よりフレキシブルになっていることに 加え、主に女性やシニア層など、キャリア志向の 正規ポストよりもむしろ補助的な雇用を求める 新規参入者を市場が迎え入れているのである。 こうした層にとっては週に数日、さらには数時間 だけ仕事があればよい。BNPパリバ証券チーフ エコノミスト河野龍太郎氏の計算によると、2012 年末から2018年初にかけて労働人口が5.7%増 加したのに対し、労働時間の伸びは+1.6%に留 まっていた。
 

世界の人口と出生率の推移

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、学術誌『Lancet 』 に1950年~2017年の世界の人口・出生率に関 する初の包括的研究を発表、195ヵ国の比較を 行った。その結論は非常に興味深く、また時に将 来への不安を抱かせるものとなっている。この研 究によると全世界の出生率(10~54歳の女性1名 あたりの子供の数)は4.7人から2.4人に減少して いるが、国により1人(キプロス)から7.1人(ニジェ ール)までの格差が存在する。また本研究には世 界人口が現在年間約8400万人ずつ増えているこ と、平均年齢が32.1歳(1950年には26.6歳)、生産 年齢人口(一般的には15~64歳)の割合が65.3% (ただし日本は60%未満)であることなどが示さ れている。フランスの出生率は1.8人で、日本の1.3 人よりも高い。

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