企業トピックス

EVのバッテリー、使い終わったら?

引用:「Bib Batteries」

今回は「Bib Batteries」の事業内容や、バッテリー業界におけるサステナビリティの取り組みについて、silicon canalsの記事を元に考察します。

日々ニュースを追っている人でなくても、多くの人が一度は中国EV(電気自動車)最大手の「BYD(比亜迪)」の名前を聞いたことがあるかと思います。

 

中国国内の自動車業界では熾烈な価格争いが繰り広げられており、「BYD」だけではなく中「吉利汽車」や米「テスラ」も価格を引き下げています。

 

一方でEVについては負の側面も取り上げられています。火災事故の話もありますが、特に今回注目するのはEVのバッテリーのリサイクルについてです。

 

フランス、パリを拠点とするスタートアップ「Bib Batteries」が、2024年9月に、複数のVC等から計€2.2m(約3.56億円)の調達を行いました。「Bib Batteries」バッテリーのライフサイクル全体の管理を専門とする革新的な取り組みを展開しています。

 

今回は「Bib Batteries」の事業内容や、バッテリー業界におけるサステナビリティの取り組みについて、silicon canalsの記事を元に考察します。

 

参考記事:

silicon canals | Paris-based Bib Batteries bags €2.2M to accelerate the circular economy of batteries

バッテリーをリアルタイムでモニタリングする

2021年に設立されたこのスタートアップは、EVバッテリーの初期使用から第二の「人生(修理 (repair)、再利用 (reuse)、リサイクル (recycle))」に至るまで、バッテリーのライフサイクルを延長することを使命としています。

 

「Bib Batteries」は、追加の機器を設置することなくバッテリーの健康状態をリアルタイムでモニタリングできる先進技術を開発しました。このモニタリング技術は、バッテリーの寿命を延ばすだけでなく、その第二の「人生」を予測し、経済的価値を最大化することを可能にします。

 

 

設立以来、同社のプラットフォームでは40,000以上のバッテリーを追跡し、修理と再利用のソリューションを通じて2,000トンのCO2を節約したという実績があります。これは、バッテリーの循環型経済を促進しながら、環境負荷を低減する取り組みの成果と言えるでしょう。

 

220万ユーロの資金調達で加速する技術開発と事業展開

「Bib Batteries」は今回、「Family Ventures」を主要投資家として€2.2m(約3.56億円)の資金調達に成功しました。この資金調達には、「NextGear Ventures」、「SuperCapital」、「Wendel Family Office」、「Techstars Paris」なども参加しています。

 

 

同社のCEOであるPierre-Amans Lapeyre氏は、「この資金調達のおかげで、バッテリーのモニタリングと管理技術を大規模に展開し、顧客に初期使用時のバッテリー寿命を延ばし、第二の『人生』に割り当てるためのツールを提供できるようになる」と述べています。

 

CTOのMartin Vaz氏も、バッテリー部門はまだ初期段階で、施行されている基準はほとんどないことや、今まで数回の手順だけで車両バッテリーの健康状態を知ることは不可能であったことに触れつつ、だからこそ使用期間全体を通じてバッテリーの状態に関する信頼できる情報を提供するアルゴリズムを開発したと、技術的な課題とそのソリューションとしての自社サービスを説明しています。

EVバッテリー管理の課題と「Bib Batteries」の可能性

今後10年間で、ヨーロッパは寿命を迎える1億個のEVバッテリーを管理するという大きな課題に直面します。これらのバッテリーは車両価格の40%を占め、1個あたり3〜10トンのCO2等量を排出するとされています。

 

「Bib Batteries」の取り組みは、この課題に対する一つの解決策となる可能性を秘めています。

バッテリーの健康状態に関する透明性を保証し、再利用、修理、リサイクルのソリューションを提供することで、同社はバッテリーの循環性を発展させながら、経済的に実行可能なソリューションを提供することを目指しています。

 

日本においても、巨大な自動車メーカーが何社もあることから、EVの普及に伴いバッテリー管理の重要性が高まっています。

「Bib Batteries」のようなスタートアップの取り組みは、日本のEV市場や環境政策にも示唆を与えるものと考えられます。

 

例えば、日本の自動車メーカーやバッテリーメーカーとの協力により、より効率的でサステナブルなバッテリー管理システムの構築が可能になるかもしれません。

 

またスタートアップとの協業についても可能性が広がります。

欧州では国内生産のバッテリー製造をスタートアップが行おうとしている事例が数多く見られ、例えばフランスのバッテリーメーカーである「Verkor」もその一つです。

 

欧州の投資銀行やフランスの公共投資銀行である「Bpifrance」をはじめとする様々な機関・組織から計€3.8b(約5,944億円)を調達しており、欧州のEV市場を支えていくことになると評価されているユニコーン企業です。

 

こうしたスタートアップに対して、「Bib Batteries」が補完的に働くことも十分に考えられます。

このトピックに関心がある方や、事業拡大・新規市場への参入をお考えの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。私たちは、日本とフランス・ヨーロッパをつなぐイノベーション、特にオープンイノベーションやスタートアップの専門家として、貴社のニーズに合わせたサポートを提供いたします。詳細なご相談や個別のアプローチについて知りたい方は、CCIFJメンバーページよりお問い合わせください。

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