エディトリアル:新旧が手を組む時代の到来

エディトリアル:新旧が手を組む時代の到来

昔ながらのメーカーと新しいソフトウェアディベロッパー。両者は互いの存在なしにはやっていけない。

自動車産業の主要国 

日本とフランス 自動車業界における日本とフランスの比重は今なお圧倒的に大きい。マッキ ンゼー社が同テーマについて比較研究を行った結果だ。日本とフランスの自動 車メーカーは、2か国だけで世界シェアの約40%を占める。日本は正真正銘の世 界的な生産活動を行い、地理的には比較的ほどよく世界の市場に分散している。 一方、フランスは2/3がヨーロッパ市場だ。マッキンゼーによると、日本とフランス は世界の自動車部品上位10市場の半分および上位100位の1/3を占めている。 また日仏両国はどちらも将来に向けた良いスタートラインに立っており、自動運 転システム(特にルノー・日産・三菱、トヨタ)、コネクティビティ(自動車の新サー ビスに必要不可欠な5Gを2020年までに装備)、電動化(日本とフランスは2025 年までに60車種以上の電気自動車(EV)を発売予定)、モビリティ(日仏いずれも カーシェアリングサービスの経験)の分野をカバーしている。国内市場に関して は、日本とフランスではそれぞれ事情が異なる。日本は国内シェアの91%を占め るのに対し、フランスは65%だ。日本では地方生活に適したコンパクトな車体で 日本独自のカテゴリーの軽自動車が最も人気があり、一方フランスはルノーのク リオに代表される多目的車の「Bセグメント」が人気だ。また日本はガソリン車と ハイブリッド車が優勢であるのに対し、フランスではガソリン車とディーゼル車が ほぼ対等に普及している。

新しい波

「ここ何年もの間、コストダウンについて話してきました。つ いにテクノロジーについてです。やっとわくわくするような話 です」と、穏やかな気質のアリ・オードバディ氏は楽観を隠せ ずにいる。自動車業界の有数な革新的企業ヴァレオジャパ ンの代表取締役社長オードバディ氏は、自動車産業を変え る革命の黎明期を100年に一度訪れる機会とみなしている。 「もちろんヴァレオは常にコストに気をつけていますよ!」と オードバディ氏は付け加える。 ヴァレオは自動車産業のあらゆる他社と同様、車の電動化、 デジタル化、自動運転、モビリティサービスという4つの同 時的に起こる大きな変革の転換点に立っている。そしてヴ ァレオは良いポジションについている。2か国で世界の自 動車市場の40%を占める日本とフランス両国にまたがって いるからだ。「日本はこの革命の前哨です。若者は自動車産 業への就職を望んでいます。ヴァレオジャパンは、年に200 名のエンジニアを雇用しています」と、アリ・オードバディ氏 は説明する。

反撃と再生

これは自動車業界にとって素晴らしい反撃だ。人々はソフト ウェアがハードウェアを丸のみにすると考えてきた。古い経 済の優良企業が、膨大な固定費、マージンの減少、負債によ る麻痺で、底なしポケットを持つ新しい経済のGAFAM(グー グル、アップル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト)や他 の新規企業に自然と飲みこまれてしまうのか、と。1933年に 事業を開始し自動車産業の世界トップを誇るトヨタは、時価 総額が2千億ドルと評価されている。一方、9年前に誕生した ライドシェアリングの大手ウーバーはすでに720億ドルだ。し かしスタートアップは自動車製造の骨折り損な仕事に取り組 みたいとは思っていない。金の山に腰掛け、しばしば独占的 または寡占的な立場のスタートアップは、文字どおり「汚れた 油の中に」両手をつっこむ気はさらさらないのだ。「グーグル の本社へ行ったことがありますか?15時には社員は皆帰宅し ます。フランスの社会保障部門の公務員よりも早く家に帰る んですよ!」と、台湾の若い投資家ジェリー・ヤン氏は笑う。同 氏は初めて財産を築いた後にパリへ移住し、ハードウェアス タートアップ支援のための資金管理を行っている。「グーグル もアップルも決して自動車メーカーにはなりませんよ!ありえ ません!大変過ぎるのです!」とヤン氏は言う。 日本の自動車メーカーにとっても、この改革は再生となる。 ホンダは自動運転車に対して何の計画も立てていなかった かのように見えた。トヨタは運転する喜びと自動運転の技 術的な障害のために、もう少し時間があると思っていた。も はやそうではない。ホンダは自動運転車開発を行うスター トアップ、クルーズオートメーションへの巨額の投資(27億 ドル)を発表した。だが投資や業務提携に最も積極的なの はトヨタだ。「豊田章男社長は社内で変革の風を吹かせま した。彼は危険を承知しているのです。なぜならこのような 革命に直面し、トヨタが滅び得るからです」と、元幹部の一 人は話す。

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