エディトリアル : チャレンジ

エディトリアル : チャレンジ

ヨーロッパ全域、なかでもフランスの魅力を疑う者がいたら、いつも微笑を絶やさない日本貿易振興機構(ジェトロ)の副理事長と15分ばかり話をしてみるといいだろう。「子供のころ、両親がパリで仕事をしていたのですが、フランスの小学校に温かく受け入れてもらいました。私の片足は日本に、もう片足はヨーロッパにあります」と赤星康氏は喜んで語る。赤星氏は、東京の駐日欧州連合代表部で2月28日に開催されたセミナーに講演者の一人として参加した。このセミナーには日EU経済連携協定(EPA)交渉における主要な関係者が一同に会したが、おそらくもっとも雄弁だったのが赤星氏だろう。同氏は日本にとってのEPA合意の課題を驚くほど明確に説明していた。「二国間合意が増えています。日本には将来の国際貿易規格を作り出すための強力なパートナーシップが必要なのです」と赤星氏は説明する。ジェトロは国民への周知の努力を続ける。「日本企業に欧州市場に向けた準備をさせるため、スタッフを50名新たに採用しました。EPAのテーマについてのセミナーを2019年3月までに日本中で100回程度開催します」と赤星氏は発表した。こうしたボランタリズム(自発主義)は、フランスにとっての利益となるだろう。「今やエマニュエル・マクロン(フランス大統領)が欧州の新たな中心人物です。アンゲラ・メルケル(ドイツ首相)は任期の終わりに近いのは明らかですし、イギリスはブレグジットの準備中です」と日本の外交官はオフレコで語った。安倍首相は7月14日渡仏し、フランスの招待客としてシャンゼリゼ通りで行われるパリ祭の軍事パレードに、マクロン仏大統領の隣に列席することが予定されている。

一方で、日本の対仏投資は進んでいない。最近ジェトロが日本企業に対して実施した、ヨーロッパで次に進出したい国の調査で、フランスは第9位だった。ポーランドよりも下位になる。ロンドンから撤退する金融機関は、パリよりもフランクフルトやアムステルダム、ブリュッセルに目を向けている。「ヨーロッパのどこに拠点を置くかはあまり重要ではありません。日本の金融機関はむしろパリ市場の業務を強化しており、精力的に求人しています」と、ある外交官は逆の動きを説明する。

マクロン大統領は年末に訪日の予定である。フランスの春を騒がせた長期ストライキによって打撃を受けたとはいえ、マクロンの大統領選出はフランスにとってメディア上のポジティブなショックだったことは間違いない。日仏関係に詳しい専門家は次のように説明する。「ストライキは改革の最初の結果です。ポジティブな結果はこれから出てくるでしょう。日本はドイツとの間に無理のない緊密な経済関係を有していますが、フランスとも同様の関係を作り上げなければなりません」チャレンジする、それともしない?

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