エディトリアル : 変わる日本、もっと自由に

エディトリアル

2017年7月6日、日本と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)の大筋合意を発表した。これは、国際社会に向けて発信された強烈なメッセージであった。2013年に始まった交渉はこれまで難航を極め、日本・欧州のビジネス界には諦めムードが漂うほどだったが、交渉担当者はそんな状況を打破する術を心得ていたのだ。とりわけ楽観的な見通しを持っているのは、欧州の農業・農産品加工業界だ。今回の交渉における「譲歩」をその一言で片付けるのは難しい。厳しい姿勢を崩さなかった日本の関係当局だが、彼らは現実主義に徹して国益を優先した。日本企業にとって国内市場は既に飽和状態に達しており、このまま閉鎖的な規制にこだわり続ければ、日本企業は国内に閉じ込められたまま衰退していく可能性が高い――その ことを日本人は十分に認識している。非関税障壁は外資系企業の日本離れにつながるだけではなく、国内企業の発展も阻害してしまうからだ。 関税障壁に関するこの協定の効果は計り知れない。「現在、関税のかからない品目は日本に輸入されている製品(「タリフライン」)のわずか41%ですが、協定が発効するとこの割合が86%に跳ね上がります。これにより欧州は、化学製品、金属、衣料、繊維など様々な製品を初めて関税なしで輸出できるようになるわけです」と、ある欧州の交渉担当者は喜びを隠せない。日本で関税のかからない貿易にEUが占める割合は34.4%に達し、米国や中国は欧州との比較で一歩後退することになる。「非」関税障壁についても、自動車や農業・農産品加工業、公共事業入札など多数の撤廃が予定されている。非関税措置について、欧州の企業は自国の当局に対し特に監視体制を強めるよう求めている。テクノロジーの変化や衛生上の要件を口実に、保護主義的な性質を有する新たなルールが導入されるのはよくある話だ。農業・農産品加工業においてトレサビリティや安全性の要件を持ち出せばきりがなく、その必要経費はとりわけ零細生産者に重くのしかかることになる。ただし現在調整中の紛争解決当局が設置されれば、こうした思惑にも歯止めがかかるはずだ。何よりもこの協定は、欧州の企業に対し「日本というチャンスに賭ける」よう強く促すものである。自由貿易の実現に向け新たな一歩を踏み出した今、欧州の企業にとって、この魅力溢れる巨大市場を素通りする理由は何もない。

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