フロマージュを味わう時

交渉は大詰めを迎えている。しかし、「最後の最後」が難しい……

あと一歩

「永久、それはとても長い時間だ。特に最後のところが...」とはウッディ・アレンの名台詞。これは自由貿易に向けて、2013年から交渉を続けてきた日本とヨーロッパの関係者にとっても標語になるような言葉だ。EUとの決着の時を2015年末までに、次いで2016年末までにと目指してきた日本政府だが、再度交渉の延長を行うに至った。2016年12月中旬の東京での大詰めの交渉では最終合意への期待が高まったが、結果は半ば失望させるものに終わった。「この2週間で交渉は大きく進展しました。しかし政府の要求、そして欧州世論が大きく高まっている中、非の打ちどころのない合意がどうしても必要なのです」とヨーロッパ側の担当者であるマウロ・ペトリッツィオーネ氏は来京時にこう語る。欧州では自由貿易に関する世論の印象が悪くなり、この交渉の背景が変わってきたことを同氏は強調する。ヨーロッパ側の担当者たちは自らのやるべきことはやったと考えている。「委員会は、日本側の要求に応えることができると確信したタイミングで交渉を開始しました」とペトリッツィオーネ氏。

徹底的に

日本側の障害は、相変わらず農業や農産物加工業についてが中心だ。「日本は、すでに他の全ての国が了承している国際ルールについてすらまた問題にする」と欧州の外交官はいら立つ。例えば、ワインだ。その生産国がメンバーの大半を占めるワイン国際機構(OIV)によれば、ワインとは「新鮮なブドウ(圧搾の有無を問わず)又はブドウ果汁を完全に又は部分的にアルコール発酵させたもの」で、「アルコール定量が容積の8.5%を下回らないもの」を指す。しかし日本はOVIの加盟国でなく、ワインに関する法的な定義すら存在しない。かくして日本の市場では、赤紫色をしたアルコール度数4%の飲料が自称「ワイン」として流通し、そしてヨーロッパ人はこのひどい安酒が本場の本格ワインの不当な競争相手となっているのを目の当たりにするわけである。また牛乳も、交渉における非常に繊細なテーマだ。近代化のために多大な公的支援の恩恵を受けたセクターであり、技術面で非常に進み、また過疎地域において雇用(そして議員)を支えている。この特権を日本人から引きはがすのは難しい。さらに驚くべきことに、チョコレートやチーズについても軋轢が存在する。「障壁が無くなったら、ヨーロッパの競争相手に駆逐されてしまうだろうと日本の生産者は気づいているのです。しかしこのおかげで他の項目、例えば豚肉における特権の撤廃が可能になります」とEU外交官は語る。

一方、地理的表示保護制度(GI)については順調だ。日本は常に、アメリカ式の商標制度とヨーロッパ式の地理的保護制度との間で揺れてきた。「日本は2014年に、ヨーロッパをモデルにした制度を作りました。生産者たちは自分たちの輸出品を保護するためにいくつものGIを登録しています。彼らが我々のGIについても認知し、例えばスーパーマーケットで、『アメリカ製カマンベール』(または日本製のそれ)といったものを見かけることのないようになることを求めています」。

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