マツダ、猛獣に生まれ変わる

マツダ、猛獣に生まれ変わる

「エンジニアリングよりもデザイン」が功を奏す

退屈なトヨタ
従業員35万人、年間売上1千万台、革新的な数多くのテクノロジーを有する大企業トヨタは2017年8月、年間生産台数が150万台のマツダの資本金の5%の取得を発表した。マツダはこれまで、市場の電気自動車化にも自動運転車の到来にも関心を示してこなかった。
しかし広島に本社を置くマツダは、経営難に陥ることもなく売り上げと利益を着実に上昇させている。「豊田章男は数年来、トヨタ車よりも魅力的な車を作り出すマツダの力を羨望のまなざしで見つめていた」とトヨタの元幹部はいう。「トヨタ車は長らく、退屈だと評されている」とトヨタ代表取締役社長は昨年苛立ちを示し、トヨタの設計アプローチの変化を後押しするため、マツダの4ドアセダンの洗練された気品ある曲線の秘密を解明しようとしていた。
マツダのアトリエで2000年代、デザイン本部長前田育男の指揮で改革がなされた。「私たちは自動車の考え方を変えたかったのです。動きの精神から再出発し、すぐに車のフォルムを定めるのでなく感情をキャッチすることが重要でした」と説明するのはマツダのデザインモデリングスタジオ部長の呉羽博史である。日本車のフォルムに伝統的に保守主義を伝統的に押し付けてきた王道のエンジニアの枷から解放されたマツダのデザイナーとモデラーたちは、サバンナを走る大型のある猛獣の動画を見るために集められた。獲物を追うジャガーの映像だった。
彼らはまず紙に素案を書きつけ、その後数週間、彼らが見出そうとしていた動物的・官能的敏捷性にインスパイアされたフォルムを粘土で表現しようと作業した。

魂動
彼らは最終的に、長さ60センチメートルのほとんど筋肉の様な抽象的なオブジェを選択し、これを彼らの将来の創造の「バイブル」とした。「これが私たちの表現しようとしている“魂動”です」と呉羽博史はいう。
デザインチームは次に、エンジニアにそのフォルムを提示し、このコンセプトを大量生産可能な4ドアセダンにするよう要求しなければならなかった。「もちろん抵抗はありました」と幹部は微笑む。「しかし彼らも理解してくれました」。そして2010年、コンセプトカー靭(SHINARI)がベールを脱いだ。それ以降、SUVコンパクトCX-5、ロードスターMX-5、さらにはネコ科の動物を思わせるMAZDA6がこのひとつのテーマに従ってモデルチェンジされた。
モデラーとデザイナーのチームは車のインテリアをもコントロールし、マツダが習慣として顧客調査を行っていた「デザインクリニック」を中止した。これらのアトリエがこれまで大胆な発想を逆に押さえつけていたのだ。「伝統的な期待を超えて人を驚かせたければ、自分自身で作り出すことができなければならないのです」と呉羽博史は説明し、コンセンサスばかり追っていると必然的に無味乾燥なフォルムになってしまうということを理解し、心をひとつにして結成されたチームを擁護する。トヨタもこれに納得し、以来このような小さな革命を起こして、これまで一切を取り仕切っていたエンジニアの権力をデザイナーに少しずつ移そうとしている。理論上、デザインのリーダーは製品開発戦略においてエンジニアのトップと同等に重きをなすことができる。この新機軸はすでに最新のプリウスや、豊田章男が喜んで「セクシー」と表現したカムリ2018年モデルにあらわれている。

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