人工知能(AI)分野における日本の底力

人工知能(AI)分野における日本の底力

ロボ・グローバル・ファンドのジェレミー・カプロン氏曰く、「ハイテク部品を支配するのは昔も今も変わらず日本企業だと思 います」。

先日、ラスベガスで開催された世界最大級の 家電見本市(CES2018)を視察されたようです が、AI分野での日本のプレゼンスについてどうお感じになられましたか?
昔も今も超ハイテク部品分野で日本企業の右に出るものはいません。産業部門によっては、日本製の中核部品が世界規模での寡占状態を引き起こしています。一部の中核部品を製造する日本メーカーは押し寄せる需要に対応し切れず、そのせいで産業ロボット分野の成長にブレーキがかかっているほどです。ナブテスコやハーモニック・ドライブ・システムズの減速機、THKのアクチュエータなどはまさにその好例と言えるでしょう。またSMCやCKDなどの日本メーカーも、ロボットの機械部品を動かす空圧バルブ製造部門の一部を牛耳っています。台湾のエアタック国際グループは、性能面で若干劣るものの価格は大幅に安い製品でこれら日本メーカーに揺さぶりをかけようとしましたが、各社はその攻勢を歯牙にもかけていません。そしてキーエンス、この会社は日本のアップル社とでもいうべき存在です。アップルと同様、同社は 1990年代に製造部門から撤退し――これは日本メーカーとしては極めて珍しいケースです――、事業活動をイノベーションと販売部門に特化しました。同社の営業利益率は実に40%にも達しています。特に力を入れているのが未来の工場、すなわちデジタル工場で使用される設備で、キーエ ンスはこうした工場向けに電子部品検査用の光電センサを製造しています。その成長力、革新性、 収益性、投資利益率……いずれの面でも同社は私がこれまで分析してきた中でおそらく最も優良な企業だと思います。

デジタル工場とは?
需要の変動に対応できるよう複数の生産ラインが 同時に稼働する柔軟性の高いスマートファクトリーで、工場自ら各生産工程を監視し、消費電力データや生産性データなどを収集します。ヘンリー・フォード以来製造業を支配してきた一本道の生産ラインに対する革命とでも申しましょうか。

製造業ではソフトウエアの重要度が日増しに高 まっていますが、これにより日本の業者は窮地に立たされるでしょうか?
テレビゲームを除くと、確かに日本は世界レベルのソフトウエアメーカーを輩出していませんが、この分野に注力している日本企業もあります。例えばファナックは、ロックウェル・オートメーション、シスコシステムズ、PREFERRED NETWORKSと共同でサービス・プラットフォームを開発し、シーメンスの類似製品と競合しています。

他の企業では?
ダイフクという名前の企業が間もなくメジャーになるでしょう。同社は倉庫オートメーションシステ ム分野の世界的なリーダー企業です。倉庫管理は非常に細分化された部門で、市場には小規模企 業がひしめき合っていますが、オンライン商取引 (世界の商取引全体に占める割合は10%だが、 年に20%もの伸びを見せている)の到来を受け、 物流需要が大きく高まったことで急成長していま す。例えばUPS(ユナイテッド・パーセル・サービ ス)などのように、運送会社はオートメーション 化に莫大な投資を行っています(UPSの投資額 は2014年の20億ドルから2017年には40億ドル に倍増)。日本の業界関係者は、世界レベルでそ の地位固めに取り組んでいる最中です。最後に もう1社、豊田通商の名前を挙げておきましょう。 同社は世界で最も優れたフォークリフトを製造しています。

このページをシェアする Share on FacebookShare on TwitterShare on Linkedin