女性都知事

日本の政局を左右する切り札であり、与野党両陣営から一目置かれる小池百合子東京都知事。就任から1年、常に先へと進む知事が本誌のインタビューに答えた。

東京は建築物の移り変わりが激しい街です。多くの貴重な建物が解体され、原宿駅や九段会館の存続も危ぶまれていますが、都知事としてこうした状況に待ったをかけることはできるのでしょうか?
衆議院議員時代、オークラ委員会に所属していたことがあります。全国銀行協会が入居する歴史的な建物の解体計画が持ち上がりましたが、私はレンガ造りのこの古い建物を残すべきだと主張しました。結局この建物は保存され、その裏手に高層ビルを建てたのですが、これは新旧の建造物がうまく組み合わされた良い例だと思 います。東京駅もひとつの成功例で、街の雰囲気が変わらず維持されていますね。環境大臣としては、建設廃棄物の処理問題に取り組みました。日本の廃棄物の実に60%が建設現場から出ています。ティッシュペーパーでも捨てるように建物を解体して捨ててしまうことには大きな抵抗があります。古い建物をできる限り大切に保 存していきたいものですね。

この問題に関して法整備が必要でしょうか? 
ルーブル美術館のピラミッドにはびっくりしました。建築物は現代的な機能を備えつつ、同時に過去の遺産にも配慮すべきだと思います。日本社会でも全体的に保存重視の傾向が高まっているようです。

環境に優しい都市の実現に向け、例えば断熱性に優れた高性能ビルなどの建設を後押しする必要性は?
私どもは太陽光発電やLED電球の使用、二重窓の設置などを進めており、これらについて補助金制度も用意しています。この分野に関しては欧州、特にドイツが一歩リードしていますね。断熱性の高い中古の家がよく売りやすいというインセ ンティブがあるのは、良いシステムだと思います。しかし日本の家屋は集中暖房ではなく、部屋ごと、場所ごとに行う個別暖房が主体です。その一方で エアコンは広く普及しているわけですが……   フランスでは2003年の猛暑の時に、エアコンがなくてパリなどで多数の犠牲者が出ましたね。

街の景観を損ねている電線の地中化を目指しておられますが、実現の可能性は?
議員時代には電線の地中埋設に関する法律制定に取り組み、その後都知事として無電柱化推進条例を制定しました。技術的な革新と工事の革新に加え、人々の意識を変えていく必要があります。

東京の国際金融都市化というお考えをお持ちですが、外国の業界関係者にとって最大のネックは税制です。この点に関しては、知事の裁量の及ぶ範囲が限られているのではないでしょうか。
確かに仰るとおりで、財務省レベルでの取り組みが不可欠です。マクロン大統領は法人税を25%まで下げたいとお考えですし、トランプ大統領も減税をお望みのようですね。私は議員時代に税制調査会の副会長を務めていましたが、税制の細かい調整を行っていました。今後日本の競争力を維持していくためには、もっと踏み込んだ改革が必要です。東京都としても、この分野で必要な役割を果たすべきだと考えています。

例えば東京の地方選挙における外国人への投票権付与に賛成ですか?
外国人居住者による地方自治への参加には様々な形が考えられますが、投票権はその1つに過ぎません。フランスでは移民の大量流入による問題も起きているようです。日本はこの問題に関する欧州の経験から学ぶところがあるように思います。

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