指標

過労死に死を!
2015年12月25日、電通社員だった高橋まつりさんが、あまりに過酷な仕事に絶望して自殺した(時間外労働105時間/月)。労働環境や過労死問題について大論争が巻き起こった。法律が定める労働時間は40時間/月、時間外労働は45時間/月である。「時間外労働を減らせば、生産性、雇用、出生率にプラスの効果があるはず」と野村證券エコノミストの高橋泰洋氏は指摘する。人材サービス大手Adecco(アデコ)社で東京を拠点にアジア・パシフィックを管轄するクリストフ・デュシャテリエ氏は、「日本には長時間労働の文化があり、会社の同僚の手前だけでなく近所の目まで気にして定時に帰れない人も多くいます」と言う。「時間外労働賃金は給料の一部と化しているため、時間外労働を減らすと収入に大きな影響が出ます。私が現職についた頃、50時間/月程度の時間外労働をする社員が多くいました。すぐこの問題から取り組みました」。日本の厚生労働省は、2016年に時間外労働の規制を大幅に強化。国際労働機関(ILO)によると、時間外労働が最も多い国は韓国で、労働者の32%が週49時間以上働いている(日本は21%、フランスは10%)。経済協力開発機構(OECD)によると、日本人の2015年の平均労働時間は1719時間。これはOECDメンバー国の平均(1766時間)程度で、韓国人のそれを大きく下回る(2113時間)。なおフランス人は1482時間。

スクリーンが少ない
東京は映画好きの街ではない。多くの調査が「最も快適な都市」と評価する東京だが、都市成長戦略として文化を重要視するWorld Cities Culture Forum (WCCF)によると、東京の人口100万人あたりの映画スクリーン数は25で、調査対象34都市のうち、都市の規模の割に映画館が最も少ない。海外でヒットした作品が日本で上映されるまでに時間がかかるのもその一因だ(「日本ではウディ・アレンの映画がいつも一本分遅れて上映される」という冗談も)。東京の映画スクリーン数はエディンバラの5分の1(スクリーン数126)、トロントの4.5分の1(同114)、ニューヨークの2分の1(同46)である。パリは世界で最も映画好きな街のひとつだ(人口100万人あたりのスクリーン数88)。

 

観光客
2016年の訪日外国人数は2400万人だった!前年比50%増だった2015年と比べ、さらに20%増えた計算だ。来日者数が2000万人を超えるのは初めてで、東日本大震災があった2011年と比べ4倍となった。さらに良いことに、ショッピングと大都市観光が従来の外国人観光客の主な目的だが、興味の対象は多様化する傾向にあり、地方を訪れる観光客も増えだした。出身国も様々で、東南アジア(マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど)からの観光客増加が目立つ。だが残念なことに、円高と中国による免税商品対象関税措置の強化を受け、日本滞在中の平均支出額は減少。2016年には276,385人のフランス人が来日した。他方、フランスを訪れた2016年の外国人観光客数は芳しくない。フランス観光開発機構(アトゥー・フランス)によれば、前年比5%から7%減の見込みだ。ホテル業者による評価は厳しく、調査・コンサルティングのMGグループは、2016年は2009年以降で最悪の年だと指摘する。その主な原因はアジア各国、特に日本のような「遠方からの顧客」の減少。日本に拠点を置くブルターニュ出身の企業家は、「日本人がモンサンミッシェルに戻ってきた」と言うが、日本人のフランス旅行が本格的に復活する予兆なのだろうか。2016年の訪仏外国人観光客数がフランスで公表されるのは今年7月。日本の観光庁は、既に1月10日に結果を発表している。

優等生日本
シンガポールの クリストファー・ギー教授が言う (世界各国の教育システムが未来に向けて競う) 「学力武装競争」において、日本は良い位置につけている。経済協力開発機構(OECD)による最新の国際学力調査(PISA)によれば、科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの分野で日本の生徒は世界トップレベル。総合評価で、日本はシンガポールに次ぐ第2位にランキングされた。上位11位のうち8カ国がアジアだ。科学的リテラシーでは上位5位のすべて、数学的リテラシーでは上位5位のうち3カ国が東アジアの国である。フランスは総合評価で27位(OECD加盟国の平均程度)。日本の教育システムは社会的平等性の面でも優れており、生徒の社会階層と学力の相関関係が比較的小さいのに対し、フランスでは顕著。しかし、日本の教育システムではフランスより男女間の不平等が目立つと評している。

借金国
日本人は貯蓄家だろうか?国家としては違うようだ。日本の公的債務は国民一人当たり85,700ドルで、アメリカ(42,504ドル)やフランス(35,800ドル)を大きく上回る。先進国のうち、公的債務が非常に少ないのは台湾(なんと7,224ドル!)。

公的会計の体調不良
人口の高齢化と健康な高齢者が多いこと(健康寿命75歳)で知られる日本は、長い間、保健医療費の管理の面で国際的に高く評価されてきた。だが、あるヨーロッパ系大手製薬グループ子会社の社長は「日本の保健医療コストは大幅に増え、今では他の国と変わらない」と指摘する。日本の保健医療費は10年でGDPの8%から11.2%に増加。フランスの11%よりもわずかに高い。

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