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Samsung

サムスンが日本の電子部品業界を牽引する日

シャープとジャパンディスプレイは、長きにわたりiPhoneディスプレイの主要サプライヤーとして大きな存在感を示してきた。しかし最新機種のバージョン8(通称:iPhone8)  に関しては、どうやら従来からの日本のパートナー企業はあてにできないようだ。このためアップルは、7000万枚を超えるiPhone8用のディスプレイパネル用に新世代有機ELディスプレイを量産可能な唯一の企業であるサムスンに発注しなければならなかった。各サブピクセルが自ら発光するこの最新テクノロジーは、次世代の小型ディスプレイとして最も高性能だと言われる。画像はくっきり鮮やかで明るく、さらに消費電力も少ない。しかしその生産には巨額の技術的  投資が求められることから、今回の受注時期までに量産体制を整うことができた企業はサムソンを除きほぼ皆無だった。1990年代にはこの市場のパイオニアだった日本の大企業も今ではすっかり遅れをとっているが、有機ELの振興にあやかる複数の国内グループは、日本が世界の電子部品産業界における戦略的な立ち位置を今後も堅持すると確信している。新潟県で最も小さな市である見附に本社を構えるキャノンのグループ企業キャノントッキ(従業員400人)は、有機ELディスプレイ生産プロセスのリーダー企業で、これら発光ダイオードの真空蒸着・封止システムで市場シェア50%以上を誇る。その非常に複雑かつオートメーション化された機械(生産台数は年に10台ほど)の納入先は、サムスンを始めとするこのディスプレイパネルの組み立てメーカーだ。

日本の企業としてはこのほかにも、ディプレイパネル製造プロセスにおける蒸着メタルマスク(FMM)の製造シェア50%超を達成しているDNP(大日本印刷)、有機ELのディスプレイパネルに回路の形状を投影するリソグラフィ装置の多くを構築するニコンといった名も。さらに東京エレクトロンとアルバックにも、有機EL分野における輝かしい将来が待っている。

マウスからヒトへ

人工多能性幹細胞、いわゆる「IPS」細胞の扱いにおいて、日本のテクノロジーによる新たな進展が期待できそうだ。英国と日本の研究チームは、生殖力のないマウスの細胞を採取し、これを遺伝子的に変化させて正常な精子を創り出した。そしてこの精子をもとに生殖力のある健常なマウスが誕生したという。ヒトの不妊治療にこのテクノロジーを応用できるようになるかもしれない、と研究者らは期待している。

木製自動車

木製の車を運転するのは、もう子供だけではない時代がくるかも?日本の産学連携チームは、パルプから作られる「 セルロースナノファイバー」 という新素材が自動車お馴染みの材料である鋼鉄と競合できるだろうと考えている。重さは鋼鉄の5分の1で耐久性は5倍というこのセルロースナノファイバーは車両の軽量化、すなわち燃費の削減に劇的な効果をもたらすかもしれない。部品メーカーのデンソーと樹脂部品製造業者のダイキョーニシカワは京都大学と提携して研究を進め、2020年を目処にプロトタイプの発表を目指している。ただし、この新素材が抱える問題点はその莫大な生産コストである。そんな研究者達の心の拠り所となり得るのは、昔同じような状況に置かれていた炭素繊維開発の歴史だろう。日本の産業界が利益度外視で数十年かけて開発したこの材料は今や航空業界に欠かせない存在となり、東レや帝人など莫大な利益を得た日本企業も存在する。

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