“日本人はフランス人のように働くべき”

衆議院議員で内閣府副大臣の越智隆雄氏は、アベノミクス擁護の熱弁を振るっている。ESSEC(フランスのグランゼコール)卒業生でフランスでの滞在経験がある越智氏が、日本のビジョンを明らかにする。

アベノミクスの最大の成果は何だと思いますか?
私たちは、日本の社会と経済の空気を変えることに成功しました。5年前、誰もが日本は破滅的な状況に陥ると思っていました。現在は少なくとも、将来に対する希望を持てるようになっています。失業率は、過去の数字から見て最も低い水準にあります。賃金は毎年わずかに上昇しています(特に非正規雇用労働者)。物価はマイナス圏内にありません。 日経平均株価はほぼ倍増し、20,000円前後で推移しています。日本経済は、この4年間で完全に変わったと思います。我々が残した結果は 一部から批判されていますが、当初から私たちは非常に高い目標を設定していました。安倍首相は、フランス大統領の任期と同じように、5年間、政権を維持し続けています。この長期政権は、根本的に日本の政治の性質を変えたのです。

最大の見込み違いは?
2014年に消費税を5%から8%に引き上げたことのマイナスの影響が想定より大きかったことです。この増税による消費への衝撃には驚かされました。消費税は1989年に3%となり、次いで1997年に5%へ引き上げられました。この2度の増税のときは、所得税の引き下げとセットで行われましたが、今回は給付措置などの手当てを行いました。弱かった消費も足下でようやく持ち直しの動きを見せています。

男女平等政策についてはどうお考えですか?
私たちは常に、安定と自由のバランスを追求しています。女性が働きたいと思えばそれは当然の権利ですし、家にいて家族の世話をしたいと思うのもまた尊重すべきことです。しかし、ひとつ言えることがあります。それは、今日の企業が、従業員に良い労働条件を提示できなければ、雇用市場は緊張し、女性たちは姿を消してしまいます。

日本政府は国民の労働条件を変えたがっていますが、日本人のプレゼンティズム( 出勤しているのに心身の不調により頭や体が働かず、生産性が低下してしまう状況のこと) をどう克服しますか?

私の事務所では、午後7時以降は誰も残りません。日本人はフランス人の働き方を見習うべきだと、真剣に考えています。つまり、より良く、より短時間にということです。労働人口の減少により、企業にはその人的資源を合理化することが求められているのです。

越智氏は移民が多いフランスで暮らした経験がありますが、日本にとって教訓となることはありますか?
この点に関しては、私は安倍首相と同じ意見です。急激で大量の移民の受け入れは、社会を不安定にします。日本は植民地支配を受けたことがなく、移民を受け入れた経験もないからです。現在、日本は外国人に関して欧米と逆転した状況にあるのです。イギリスやフランスなどが閉鎖の誘惑にかられているときに、日本は徐々に開放していくということです。

安倍晋三首相はドナルド・トランプ米大統領との関係を大変重要視しています。それは日本とEUの関係を犠牲にしてでもでしょうか?
そんなことはありません。日本にとってEUは 大切です。ただ、日本は防衛をアメリカに頼っていることもあって、日米関係も大切です。しかし、トランプ大統領と安倍首相の関係を、主君と家臣のようには思わないでください。安倍首相は、アンゲラ・メルケル独首相と同様、G7のベテランです。そのため、トランプ大統領にとって有益となる経験を有しています。安倍首相は トランプ大統領を、現実主義の路線に近づかせようと努力しています。最近トランプ大統領の日本に対するトーンがポジティブに変化しましたが、これは安倍首相が受け入れられたことを示しているのだと思います。

このページをシェアする Share on FacebookShare on TwitterShare on Linkedin