日本人、オーガニックに舌鼓

イオンがフランスブランドで新たな挑戦、ビオセボンが日本進出

イオンの挑戦

フランスまで行く必要はない。スーパーマーケットの「Bio c’ Bon(ビオセボン)」が東京の高級住宅街、麻布十番にある。2016年12月に開業した店舗には、ダイナミックで明るく開放的なフランスのブランド、ビオセボンならではの雰囲気が再現されている。舞台裏にあるのは日本の流通業の未来がかかった取り組みだ。主導するのはまたもや流通大手のイオンだ。イオンは日本にフランスの冷凍食品専門店Picard(ピカール)を導入後、ビオセボン・ジャポン株式会社を傘下に収め、世界第3位の経済大国日本での将来的発展の基盤を作った。なぜこれほど貪欲なのだろうか。オンライン小売業の爆発的進展により、イオンなど従来の大手流通業者は戦略転換を通じて消費者を惹きつける必要に迫られている。フランスではCarrefour(カルフール)およびAuchan(オーシャン)が流通業の将来に関する衝撃的な報告を行った。例えば、オーシャンは売り場面積の20%を別の用途(教育・娯楽など)に転用すると発表した。イオンも同様の課題に直面している。さらに、日本では他国以上に、食の安全(福島第一原子力発電所の大事故以降)や消費者の高齢化・減少などが急を要する問題としてのしかかる。両社の提携は身分違いの結婚のようである。売上高656 億ユーロ、グループ従業員数52万人のイオンと比較してビオセボンは小さな企業にすぎない。国内市場の限界を懸念するとともに、グループ事業の過度に進みすぎた多角化(流通、銀行、旅行代理店、服飾ブランドなど)を嘆く取締役兼代表執行役社長の岡田元也氏は、イオングループという 巨大企業を、21世紀を生き抜く企業にしようと手探りを続けている。「イオンはスーパーマーケットチェーンというより不動産デベロッパーのようです」と、流通業界の情報通は指摘する。

岡田元也氏の作戦

こうした状況の中、岡田氏は経験を積み重ね、ビオセボンこそ次の時代の流通業の担い手になると考えた。フランスのチェーン、ビオセボンのダイナミズムに惹きつけられた。2011年当時、ビオセボンが展開していた店舗は5店舗だったが、現在は5か国で125店舗を経営しており、うち101店がフランス国内にある。ビオセボンは当初、フランス周辺の国々への進出を計画していたが、日本には着目していなかった。しかし、日本側からアプローチがあった。岡田氏の妻がビオセボンの店舗を高く評価したのが初まりだった。顧客としてである。「話はとんとん拍子で進みました」と、ビオセボン代表のジェルベール ガイヤール パスカル氏は語る。2015年にイオンとビオセボン両社の代表が電撃的な提携合意を発表して以来、合弁会社は3,500点以上に及ぶ100%オーガニック食品の取り扱いを開始した。

現在のところ、ビオセボンの日本での商品価格はフランスの3倍になる。有機農業が定着していない国で「オーガニック」に賭けることは非常に難しい。国産品の供給元が限られるため、ビオセボンは商品の半分を輸入に頼らざるをえず、日本の保健当局の検査も必要となるが、実は検査は欧州ほど厳しくはない。日本での売り上げは 順調だ。例えば、ワインコーナーでは手頃な価格で消費者にとって目新しいオーガニックワインが揃う。また、「量り売りコーナー」では様々な種類のシリアル、果物やカカオ豆などの商品を重量単位で購入できる。イベントやワークショップ用のスペースも設けており、店舗は双方向的で、顧客に新たな楽しみ方を提案できなければならないというビオセボンの理念が体現されている。

ビオセボンは未来を見据えた賭けに出た。家庭で消費する食品の質に非常に敏感な日本の若い母親たちが、真っ先にビオセボンで買い物をする。しかし、社会や流通業界の志がなければ、日本では浸透しないままで終わってしまうだろう。

オーガニックはこれから

日本では「国産の農産物は健康的」という神話が根強く残り、見た目の美しい食材が多く並ぶ。だが、この信条はよく検討すれば間違いだとわかる。日本の1ヘクタールあたりの農薬使用量は非常に多い。日本では有機農業を手掛ける農家に対し特別な支援がなく、日本の規格(JAS規格)にしても欧州や米国ほど厳格ではない。そのため、先進15か国の中で、日本の有機農業規模はまだ小さく、取扱量では7位だが、人口1人あたりでは最下位である。現在、日本の有機農業の作付 面積は農業全体の0.5%であり、米国の5%やフランスの2.5%と比べても低い。「日本の状況は25年前のフランスのようです」とパスカル・ジェルベール・ガイヤール氏は分析する。欧州や米国におけるオーガニック食品店の人気の着実な高まりは、日本の進むべき道を示している。日本はこの流れに乗ることができるだろうか。

*農業全体における有機農業の作付け面積の割合

米国 : 10%
日本 : 0,5%
フランス : 2,5%

このページをシェアする Share on FacebookShare on TwitterShare on Linkedin