有機(オーガニック)農業の将来

有機(オーガニック)農業の将来

遅れてやって来た有機農業、日本を一気に席捲?

ブレーキ
世界各国の消費者が有機農業に目を向ける中、残念ながら、日本はこの点に関し間違いなく後進国のポジションから抜け出せていない。その事実は数字にも表われている。有機農業が日本全体の農産物の生産高および売上高に占める割合はいずれも現状2%を下回っており、これは20年前のフランスと同水準だ。日本の有機食品市場が世界市場に占める割合はわずか2%に過ぎず、フランスの7%には遠く及ばない。国民1人あたりの消費量を見ても日本は世界第22位に甘んじており、3位のフランスには水を空けられた格好だ。さらに消費額に関しては、日本人による有機農業の年間平均購買額4.2ユーロに対しフランス人は33.6ユーロ、この分野で世界一のスウェーデン人に至っては実に56ユーロにも達する。加えて残念なことに、本来ならば少なくとも国民の関心喚起に努めるべき政府が、あろうことかその普及にブレーキをかけてしまっている。ややこしい規格のせいで生産者が参入に二の足を踏んでいること(有機農業への転換には約3年を要する)に加え、消費者の理解も得られていない。有機農業推進の絶好機として2020年の東京オリンピックを利用し、例えば提供する食材を有機農業で統一することもできたのに、実際に採用されるのはせいぜいグローバルGAP認証(その基準は有機農業よりもかなり甘い)にとどまる見込みである。

上昇気流
その一方で、こうした傾向に反旗を翻す動きが都市部で活発化している。2018年は日本が有機農業へと大きく舵を切る年になるかも…… 少なくともフランス発のオーガニック食品専門店「Bioc' Bon( ビオセボン)」はそう信じて疑わない。東京に第1号店をオープン(2016年12月)した後、この有機農業専門チェーンは年内に少なくとも6店舗、2019年にもそれ以上の新規開店を見込んでおり、さらに向こう5年間で数十店舗を展開すると発表した。「新規展開を予定しているのは直営店で、いずれも賑やかな場所にオープンします。これは経営の健全性と順調な拡大ぶりを示すもので、有機農業が受け入れられている証左でもあります」と、ビオセボン・ジャポンのパスカル・ジェルベール=ガイヤール氏は満足気に語る。
ビオセボンとそのパートナーであるイオンは、こうした意欲的な戦略を掲げて日本における有機農業普及の突破口を探っている。イオンはオーガニック食材に向かう世界の潮流をしっかりと見極めており、この市場への参入とビジネスモデルの転換を希望しているようだ。ただし、そのためには物事を大局的に捉える必要がある。「純利益率が1~2%の小売業などでは、特に輸入品を取り扱う場合、利益を出すにはかなり大きな規模の取引が求められます」とジェルベール=ガイヤール氏。
日本の有望顧客セグメントとは? フランスでは妊婦がいわゆるトレンドセッター 的な役割を果たしたが、麻布十番にオープンした第1号店を訪れている客層は多岐にわたるという。「コミュニティ内の口コミに負うところが大きいですね。例えばジョギングをしている人たちが量り売り食材をお求めになったり、食通の方などは自分へのちょっとしたご褒美としてうちの商品を手にされますし、グルテンやソバなどにアレルギーのある方もお見えになります」と、ビオセボン代表は語る。日本がオーガニック食品分野で先進国になれるかどうかは、今後5年間の成り行きにかかっていると言えそうだ。

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