築地の幽霊

世界で最も有名な市場がなくなるのか? 東京・銀座の中心エリアにある魚市場「築地」が、近いうちに、すこし離れた豊洲へ移転することになるだろう。土壌汚染問題のスキャンダルによって、東京都は計画を再検討したが、このままだと豊洲移転で落ち着きそうな状況だ。多くの料理人、とりわけフランス人シェフにとって、真のスキャンダルは別のところにある。築地の移転は、世界のガストロノミーで有数の重要な場所の消滅につながることだ。ルレ・エ・シャトーのインターナショナルディレクター、オリヴィエ・ ロランジェ氏は憤ってこう語る。「私は世界の優秀シェフ500人に選ばれました。私たちシェフにとって、この市場を解体することは、私たちの京都に爆弾を落とすようなものです。賛成するわけにはいきません。築地は世界で最も有名で、最も重要な市場です。第二次世界大戦中も破壊されませんでした。日本の胃袋であり、1世紀にわたって、数えきれないほどの日本人に食べさせてきたのです。日本の国民、他者の食への責任を感じているあらゆる人々、プロの料理家、そして 子どもを持つ親たちのものであるこの市場を、少数の人がどのような権利でもって、なくすというのでしょうか。築地はまさにユネスコの無形文化財に登録されるべきです」。

築地の移転は、よく1969年のパリの中央市場レ・アールの移転と比較される。「パリは、レ・アールからランジスへの移転で胃袋を取り除いたことから立ち直れていません。街は空洞で、まるでメモリが外付けされたコンピュータのようです」と、料理批評家のフランソワ・シモン氏は悲しんでいる。

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