贈賄の温床

国際商取引における贈賄に関し、日本は絶望的なまでに寛容だ。 経済協力開発機構OECD贈賄作業部会議長のドラゴ・コス氏はこのような状況に警鐘を鳴らしている。

ウェブサイトでも指摘されていますが、国際贈賄に対する日本の姿勢には、非常に失望されているようですね。

国際贈賄に対し、日本で適用されている金銭的ペナルティーには効果がなく金額も不十分で、結果としてOECD贈賄防止条約が要求するレベルの抑止力を有していません。もっと厳しい罰則が必要です。贈賄に関与した個人に対し日本で適用される罰金は最大500万円、企業については最大3億円までとなっています。しかし贈賄を利用して勝ち取った莫大な契約額を考えれば、こんな少額の罰金に一体どれほどの効果があるというのでしょう。現在、贈賄により日本の企業が手にしている契約額は数百万ドルにも及ぶ可能性があり、万一お縄になったとしても、これらの契約から得られる利益に比して雀の涙ほどの罰金しか科されないことになるのです。

日本の当局は、贈賄により締結にこぎつけた契約からの収入を差し押さえることができないのでしょうか?

できません。例えばある企業が袖の下を100万円渡して10億円規模の契約を勝ち取ったとします。その場合もこの企業に科される罰金は3億円止まりなのです。しかもこの10億円が資金洗浄されてしまえば、この行為が立件されることもありません。資金洗浄のプロにとって、日本には天国のような法の抜け穴があるのです。日本という国の経済力や政治力を考慮すれば、こうした奇妙な日本の制度は国際的に見て(特にアジア地域における)大きな問題だと言えるでしょう。

日本の法に定める国際贈賄の処罰方法は?

他のOECD加盟国と異なり、日本の贈賄禁止に係る法律は刑法ではなく不正競争防止法に含まれています。つまり訴訟を起こすのは経済産業省(METI)の役目になるわけですね。同省ではガイドラインを作成し、贈賄にあたる行為をテーマとするセミナーを数多く開催していますし、疑いのある場合には警察に通報することもあります。しかしこれはまことにもって奇妙な状況なのです。なにしろMETIの基本的な任務は企業を支援することであって、彼らを裁判所に引きずり出すことではないからです。こうした状況は、法律の適用という面でもまた別の問題を引き起こします。日本に関する最新の報告書が発表された2014年以前に起訴された国際贈賄事件はわずか3件にすぎませんでした。17年間でたったの3件です...日本の経済規模や輸出部門の大きさ、そして莫大な対外直接投資額を考慮すると、これは異常なほど少ない数字だと我々は考えています。米国やドイツ、スイスそして英国などの例に倣い、日本も国際贈賄にもっと厳しい姿勢で臨み、その摘発や捜査、処罰の適用に力を入れることを期待しています。

日本のこうした風潮を変えていくための方法は? 

起訴に関して言えば、前向きな進歩がみられます。今後は立件数をもっと増やして欲しいところです。ですが国会での大きな法改正は全く進んでいないようです。当作業部会は昨年東京で政府高官との面談機会を持つなど、日本が関連法制度を強化するようあらゆる手段を使って働きかけています。しかしこうした動きが進展した気配はなく、当方としてもいずれはもっと思い切った手段に訴えざるを得なくなるかもしれません。

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