途上のUBER(ウーバー)

途上のUBER(ウーバー)

ウーバーは日本に入り込めない。

金の上を走る

「ウーバー?聞いたことないね ! 」東京のタクシー運転手た ちは声をそろえてこう答える。 平均月収20万円、35万人の 日本のタクシー運転手は裕福ではない。それは確かだ。しか し少なくとも他国の同業者たちのように、カリフォルニアの ベンチャー企業のせいで職を失ったりはしない。ウーバー は、タクシーの配車予約サービスに特化した企業である。カ ーシェアリングサービスよりも、 自転車で料理を宅配するウ ーバーイーツの名前でよく知られている。世界第3位のタク シー市場日本で、ウーバーはなぜ蚊帳の外に押し出されて しまったのか?まず、日本のタクシーは世界で最も親切だか ら。サービスレベルの高さは伝説的だ。自動ドアに、レースで 飾られたシート、背後にはティッシュの箱まで用意されてい るし、前席シートには複数の機種に対応した携帯充電器を 設置している。日本のタクシーは、ガタゴト揺れない、まさに 現代のカレーシュ(幌つき四輪馬車)だ。お手本のように礼 儀正しいドライバー(管理職経験者がリタイア後にタクシー 運転手になる場合が多い)。短距離利用も長距離利用も厭 わない。白い手袋をはめた手にスーツケースを渡せば、ほと んどのフランス人利用者はパリの渋滞なんてすぐに忘れる。 こんな文句のつけようのないタクシー運転手をどう評価し ようというのか。こうした状況でウーバーが提供できること と言えば、追加予約を簡単にすることぐらいだろう。

試み

ウーバーも、日本市場に入り込もうとしたことがある。2015 年福岡で1ヶ月間、無料カーシェアリングサービスを試みた。 運賃はウーバーからドライバーに直接支払われた。この試 みの表向きの目的は、都会の交通手段に関するデータ収集。 しかし実際の狙いは、一般の人々にウーバーのサービスモ デルにまずは慣れてもらうことだった。「この実験は3つの理 由で違法でした。まずはドライバーがタクシー認可を持って いなかったこと。一般自動車保険にしか加入していなかった ということ。そして、ドライバーとの契約に署名している事業 者が日本国外にいるため訴訟の際の起訴が複雑だとうこと でした」と当時、国土交通省自動車局の坂井 英隆氏が説明 している。 以来、地元の大手タクシー会社と、大人気ソーシャルネット ワークLINE(ライン)が連携して、独自の予約アプリを始め た。1200メートル初乗り料金410円に加えて、日本のタクシ ーはさらに気合を入れている。もちろん、カード支払いも一 般化。世界との競合は今後も続く。

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