雪国

クラブメッド

リゾートを運営するクラブメッドがさらなる勝負に打って出た。新たな投資の対象は北海道にオープンする同社第2のスキーリゾート。さあ、スキー板のご用意を!

上質の雪に恵まれたスノーリゾート
日本クラブメッドの代表取締役スチュワート・ド・ブルゴーニュ氏を今すぐスキー担当閣外大臣に任命せよ――これは現政権に向けたひとつの提案である。同社のサホロ(北海道東部)スキーリゾ ートに閑散期は存在しない。いわゆる「バブル」期にブームとなった日本のスキー人気は1990年代以降伸び悩んでいるが、サホロの人気には全く陰りが見えないという。クラブは、夏季にもこのリゾートをオープンすることを決定、こちらも大成功を博した。「サホロの 客室稼働率はほぼ100% です」という現地関係者の言葉が全てを物語っている。サホロは現在も西欧諸国の品質基準を満たす数少ないアジア太平洋地域リゾート施設としての地位を堅持。「世界一のパウダースノー」として知られる雪(この地は世界中のスキーインストラクターの間でも評判になっている)を体験しようと、シンガポールからオークランドまで、この広大なエリアの全域から――さらに時には欧州からも――多くの人がはるばるサホロを訪れる。「フランスアルプスの積雪量は6~8メートルですが、これが北海道では12~16メートルにも達します」と述べるのは、クラブメッド東南アジア太平洋CEOのザヴィエル・デソール氏。そんな中、クラブメッドはここ日本への投資を倍増しようとしている。「ル・クラブ」の名で知られるクラブメッドは、来たる12月8日、大きな期待を込めて北海道トマムに新たなスキーリゾートを華々しくオープンする予定だ。東京に拠点を置くあるコンサルタントは「今回はクラブの株主である中国の投資会社フォースン・グループ(復星集団)が現地に直接投資しています。成功間違いなし、と見込んでのことでしょう」と述べている。トマムとサホロの コンセプトにはいくつかの相違点がある。サホロは623床、そのスキー場は21コース。一方トマムは964床、スキー場29コースからなる。サホロがどちらかといえばファミリー向けの構成となっているのに対し、トマムが狙う顧客は楽しく心躍る体験を重視する若年層だ。加えてトマムでは、世界に知られた北海道グルメなど地元の特徴を存分にフィーチャーする予定だという。スキーを楽しんだ後には、日本酒バーでのひとときが待っている。そして日本最大級の屋内ウェイブ・プールの「おまけ」つきだ。

日本における売上を5年間で倍増
トマムの開業により、クラブメッドでは向こう3~5 年間で日本における売上の倍増を見込んでいる。その先にはさらなるビレッジの建設計画があるのだろうか。「長野にリゾート施設をつくりたいですね」とグループのある幹部は打ち明ける。この熱の入れようは一体どうしたわけだろう?その理由は、アジア地域におけるスノーリゾートが秘める大きな発展の可能性にある。その筆頭たる日本は、アジア地域で真っ先に正真正銘のウィンタ ーリゾートが発展した場所だ。「日本には新たなスキー世代が1100万人もいます」とザヴィエル・デ ソール氏。クラブメッドに滞在した日本人の間で施設に対する評価が高いことも追い風になる。公の場では自分を抑えがちな日本人も、ここに来れば外国人客と一緒になってずいぶんリラックス しているようだ。「アクティビティへの参加に最も積極的なのが日本人なんですよ!」と、クラブのある管理職は驚きを隠さない。ただしアジアには日本以外にも候補地がある。まずは中国(2022年  冬季オリンピック開催国)、そして韓国(スキー人口は既に400~500万人)がその後に続く。トマムの開業以降、グループでは向こう数年間で中国に1ヵ所、その他のアジア地域に3ヵ所のビレッジを毎年オープンしていく予定だという(2019年スリランカ、2020年ベトナムなど)。これに伴い、クラブでは日本を始めとするアジア地域で3000人の採用を見込んでいる。さて、この新興市場において別格に位置付けられる日本のクラブメッド・リゾートだが、アジアにおけるウィンタースポーツ産業は、1世紀以上の歴史を持つヨーロッパ流の娯楽文化に疎い関係者による目先の利益追求の被害者となってきた。北海道北部にオーストラリア人が開発した巨大なスキー場、ニセコの急速な拡大もそのひとつだ。日本のスキーリゾート部門に詳しいある人物は「ニセコの売りはその大きさ、一方クラブメッドが追及するのは品質とアットホームな雰囲気です」とその違いを説明する。トマムの開業を2ヵ月後に控え、その合言葉も徐々に現実味を帯びてきた――「Get ready(さぁ、出かける準備をしよう)」

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