飛行機の無い、翼のように

Comme des ailes sans avion

日本の航空業界は優れた製品を生産している。しかし業界は、細分化に苦しむ。

多すぎる

需要が多すぎる!これが世界の航空機製造業界の(贅沢な)問題だ。この業界で活動しているすべての企業に、空は輝いて見えているようだ。特にアジア太平洋地域の航空機産業企業は、20年以内に、航空輸送世界シェアの40%を占めるようになるのだから。「今日、世界で2万機の航空機が運航しています。今後15年間で3万5000機になるでしょう。難しいのは、どう供給するかです」。ダイナミックなWEARE(ウィーアー)東京支社代表ADRIENPICHON(アドリアン・ピション)氏は予測する。日本企業もこの業界のブームの恩恵を受けている。80年代には、生産量の10%に過ぎなかった輸出が、2015年には53%に達した。しかし、日本の航空機器製造業者は懸念している。確かに、高品質の製品はたくさん存在する。三菱重工業の工場で製造されるBOEING(ボーイング)787用複合材の翼(飛行機の最も精巧な部分)は世界一だと専門家たちは口をそろえて言う。日本のメーカーは高付加価値部品の製造に精通している。しかし業界は、何百もの星のようにバラバラに点在する中小企業によって成り立ち、その大部分が家族経営だ。「昨日までは数百機の注文を受けていました。今や、何千機もの注文が来るのです。日本企業はフォローできません」。ある欧州航空機器製造メーカーの東京子会社社長は説明する。日本政府はこれら航空機器製造業者の産業クラスター化を試みてきた。理論的には製造業者が集積して協力し、競争に必要な最大の規模を形成する。「それがフランスの同業界でこの20年間に起こったことなのです」。某フランス企業グループの東京支社代表はこう説明する。しかし、この動きはまだ日本では起こっていない。日本の中小企業は、純粋に商業目的で個々のアプローチで集まってくるが、合併するつもりなどない。「日本ではそういう話は日常茶飯事です。新明和工業株式会社は2年に1機の飛行機を製造していますが、産業的にナンセンスです!」防衛機器製造の某外資大手メーカーの日本代表は言う。

 

ヘビー級の重工業

これらの中小企業は、長年内需に頼ってきた。それを支える彼らの顧客は有名な「重工業」だ。三菱重工業、IHI(旧石川島播磨重工業)、福知山重工業、川崎重工業の四大重工業会社は、時代錯誤の産業界の金物屋、扱う分野はエアコンから原子力発電所まで種々多様。「私は原子力、電気タービン、宇宙産業部門で仕事をしてきました。その度に、三菱重工業が競争相手でした」。ARIANESPACE(アリアンスペース)のセールスディレクターEMMANUELFRANC(エマニュエル・フラン)氏は笑う。エネルギー分野と同様、日本には航空産業分野でチャンピオンになれる企業が存在しない。4社も平均的な規模である。三菱重工業は業界で19位、川崎重工業は34位!それでも、経済産業省はまだセクター統合にノーコメントである。「もう10年間も検討し続けているのですが・・・。」某外交官はため息をつく。重工業の食欲は長い間日本の機器メーカーの注文帳を十分満たしてきた。しかし、調達手段を広げることでこの忠誠的な関係も崩れてきている。航空分野メーカーは新興国にも存在する。特に、それほど精密でない小さな部品では日本企業は競争力を失っている。アジアではマレーシアが急速にこのセクターの中心的地位を確立しつつあり、日本企業を追い詰める。「2年前、表面処理を専門とする日本企業は2社ありました。今は1社しか残っていません。ところが、4社の競合企業がマレーシアに現れたのです」とADRIENPICHON(アドリアンピション)氏は説明する。この新しい競争に直面して、日本の機器メーカーは苦しむ。その上、他の産業界と同様に労働力不足に直面しているのだ。止まらない人口減少は特に新卒者不足を引き起こしている。日本の航空業界は自動車業界と大きく異なり、それゆえに難しい状況にある。自動車業界では、製造業者は一般的に自らのビジネス拡大時に部品調達企業を連携させ、自立して飛び立つ前に内部に取り込む。よく理解されているこの連帯は、重工業企業と航空機産業界の中小企業の間では成り立たない。「むしろ反対なのです。ボーイングから得られる僅かなマージンを維持するため、重工業企業は中小企業にコスト削減を求めるのです」と業界をよく知る人物は説明する。その結果、これら中小企業は、他の国々と比べて暗闇の中にいる。そして欧州の同業者と比較して、信じられない程の負債を抱えていることがある。日本の航空産業界の中小企業の財政状況を調査した専門家は警告する。「3年間の売上高と同程度の負債比率を負ってしまうことは珍しいことではありません。それは欧州の銀行融資が許容する10倍に匹敵します」と専門家は驚く。欧州のライバル同業者のように生産設備に投資していないため、状況はさらにデリケートだ。目下日本製ロボットは、日本国内よりもヨーロッパの航空工場に投入されているくらいなのだ。「航空宇宙産業維持の鍵は、複雑で高価な重要部品の製造にかかっています。そして工場のロボット化です」。アドリアン・ピション氏はこう見る。

 

MÉCAAÉRO(メカエアロ)、トゥールーズ・・・そして東京

難しいのか、日本は?MECAAEROCONSULTING(メカエアロ・コンサルティング)は挑戦する。このトゥールーズに拠点を置く企業コンサルティング会社は、多くのフランスおよび海外機器製造業者の虎の子だ。当社は海外での最初の仕事に東京を選び、2017年事務所を開設した。その理由は?欧州企業が日本の航空宇宙分野に寄せる関心、日本企業の輸出意欲だ。「私たちは日本において4社の外資企業、海外において1社の日本企業の代理店となっています」。代表者RUTHFULLENWARTH(ルス・フレンワース)氏は説明する。「日本市場は、フランスではまだよく知られていません」と彼女は指摘する。

 

BASA(航空の安全に関する相互承認協定)締結へ向けて

2019年、日本とEU相互間の航空安全協定締結の年となるだろうか?当事者たちはそう信じたい。2016年以来、EUは日本および中国とBASA(航空の安全に関する相互承認協定)と呼ばれる協定の交渉を進めている。目的は、調達に関する時間とコストの削減を目的とし、これらの経済産業大国の間の承認手続を簡素化することで、すべての関係者にとって有益であるはずだ。欧州側は楽観的だ・・・しかし、声を大にして言えないこともある。第一に、数人の関係者によると、協定締結は欧州の売上高に大した影響は及ぼさないだろう。第二に、中国との交渉の方が早く進んでいて、より野心的だ。中国市場は爆発的に拡大している。AIRBUS(エアバス)などのメーカーは、製造ピッチを上げようと中国に製造ラインを建設した。日本でそういった動きは皆無である。その上、最近起きたインドネシア、そしてエチオピアでのボーイング737-MAX8墜落事故で、交渉が大幅に遅れる可能性がある。米国が行った最初の調査結果によれば、アメリカ連邦航空局(FAA)に責任があるようだ。これらの悲劇は、BASA(航空の安全に関する相互承認協定)交渉を進め、航空安全といった非常にデリケートな問題に関して外国当局への信頼を高めることに資さない。

 

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