混乱と進歩

混乱と進歩

日本は、最強者の法ではなくルールの下に成り立つアジア太平洋地域の保障をめざす。

危険上昇

覚醒するロシア。第二次世界大戦後、和平条約が締結されなかったため、この国と日本はまだ技術的戦争状態にある。陸上、そして特に海上で勢力を拡大する中国は、地域の現状を翻弄する。核の危険を持つ北朝鮮。この国と韓国との関係に進展はない。アメリカ合衆国のドナルド・トランプ、アジア太平洋地域におけるパックス・アメリカーナの変わらぬ番人とはいえ、彼の行動は予測不可能だ。日本の外交官は、交渉案件に事欠かない。
菊池努氏が納得しているのは、アジアにおける秩序の維持は今や全ての国に関わる事であるということ。「米中の二人三脚のさらに先を見なければなりません。この2つの強国がルールを決定できる時代ではないのです。中国も米国も、内外に弱点を持っています。2国だけでアジア太平洋地域の秩序を保証することはもはやできないのです。地域の周辺国は将棋の駒ではなくて、重要な基軸です」。この青山学院大学教授はこう説明する。
「アジアを支配するのは、権力ではなくルールです。」菊池努教授は声を響かせる。
しかし、この多国間関係を誰が制御するのか?それが日本だと内閣官房副長官補、兼原信克氏は信じたい。しばしば東西の回廊とみなされる日本が、いかにアジア太平洋地域に繋がれてきたか、日本外交の頭脳の一人は思い返す。「私たちにとって、20世紀最大の変化はアジアの台頭です。ソビエト連邦の崩壊でも米国の勢力拡大でもありません。このアジアの成長は中国に限りません。インド、そしてもうすぐバングラデシュにまで及ぶでしょう」。兼原氏はこう説明する。


アジアの異端児


日本は、矛盾しているように思われるかもしれないが、今享受している現状を保証する主導的な役割を果たすことを望んでいる。日本は中国の成長に対する抑止力の働きをしたいのだ。これは外交官が決して口には出さないものの、常に頭にあることだ。だからこそ、交渉から外れた米国大統領、ドナルド・トランプがホワイトハウスに戻った翌日、日本は11カ国との環太平洋パートナーシップ協定に合意した。「日本はこの地域の中小国と連携に、益々力を入れていくでしょう」。菊池努氏は約束する。

このような理由から、日本は世界で二番目に広い海域を有す るフランスに接近した(海底域は世界最大)。「フランスの海 洋領土の大部分がアジアにあります」と兼原信克氏はまず注 視する。また、このコミュニティーが利益追求のためだけでな く、ヨーロッパの理想哲学に基づいたものでもあると公言し た。「民主的な価値観はアジア人にとって外から来たものでは ありません。2300年前、中国の哲学者、孟子は、政府の目的は 国民に仕えることであり、その逆ではないと宣言しました。私 たちは国際的な自由秩序を支持します」と兼原氏は説明し、「 自由、平等、博愛」とフランス語で言った。
国防省戦略局長顧問NICOLAS REGAUD(ニコラ・レゴ)氏はこ の主張を支持し、次のように説明する。「200万人のフランス人 がインド太平洋地域に住み、働いています。そして8000人の兵 士が配属されているのです」。

我らが海

フランスも「ルールの上に成り立つ世界を信じています。多国 間主義、共通の資源への自由なアクセス、自由な貿易関係、紛 争の平和的解決、そして最強国の権利にノーと言える世界で す」とレゴ氏は説明する。このひとつの信念が、フランスのよ うなアジアから遠く離れた国のきわめて重要な利益と合致す る。なぜなら北朝鮮の核ミサイルは米国だけでなくヨーロッパ にも届くし、あらゆる「地域的」危機は今や世界的な波及効果 を持っているからだ。「フランスは腕組みして見ているわけに はいかないのです」とレゴ氏は結んだ。

2014年以来、日本とフランスは、技術の交換、共同軍事演習 など幅広い分野での関係を深めるために両国の防衛大臣と 外務大臣の間の年次対話« 2+2 »を継続している。両国とも、 中国が掲げるニューシルクロード(BELT & ROAD INITIATIVE: 一帯一路)について同じ考え方を持っている。この巨大なイン フラプログラムによって、アジアとヨーロッパの結びつきはより 強まるに違いない。「皆、インフラ整備によって2大陸間の連絡 がより良くなることに賛成です。しかし、私たちも日本と同様、 これらのプログラムはルールに基づき、質の高いプロジェクト と覇権掌握を目的とせず透明性をもって実施されなければな らないと考えています」。ニコラ・レゴ氏はこう結論づける。肝 に銘じて、しっかり覚えておこう

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