日本の皆さん、一層の努力を

日本の皆さん、一層の努力を

未来の多様なエネルギー開発を牽引する国、日本。先進の企業がその課題をチャンスに変える。

 

資源に乏しい国、日本。ところがこの国、あらゆる未来のエ ネルギー分野に臆面もなく顔を出している。まずは再生可 能エネルギーだが、経済産業省の最新の予測によると、こ の種のエネルギーが2030年までに日本の「エネルギーミッ クス」の4分の1を占めるとされている。複合企業エンジー が先頃日本事務所を開設したのも、こうした姿勢の表明に 背中を押された格好だ。「日本はバイオマス、太陽光、陸上・ 洋上風力などの再生可能エネルギーに舵を切っています。 再生可能エネルギーはエンジーの掲げる主要開発戦略の ひとつですから、当社が日本市場に目を向けるのは自然な 成り行きですね」と語るのは、グループの上級副社長ディデ ィエ・オロー氏(写真)。錚々たるフランスの大手企業(トタ ル、ヴェオリア、エア・リキード、サンゴバン……)に続くエン ジーの日本進出だが、フランス国内では既に住友商事との パートナーシップに基づく

風力発電事業なども進められている。
この国が「クリーン」エネルギーの中で最も注目しているの が水素だ。水素は、国内の卓越した工業施設を「持続可能 性」という錦の御旗のもとで使用できるまたとないチャンス なのである。「この分野を先導するのが日本です。世界初の 水素社会の実現、それがこの国の願いなのです」と語るの は、エア・リキードグループのアジアパシフィックエグゼクテ ィブ・バイスプレジデント、フランソワ・アブリアル氏。「当社 では既に国内7ヵ所に水素ステーションを設置しています。 東京オリンピックが行われる2020年の夏には、これを日本 全国40ヵ所に拡大する予定です」と同氏は胸を張る。世界レ ベルの取り組みとして、エア・リキードはある日本企業とと もに世界エネルギー会議の議長を務めている。その日本企 業の名は……トヨタ。「当社は日本の自動車メーカー各社と 協力しています。電気自動車と燃料電池で動く自動車、これ らはいずれも電気式という意味で似た者同士です。ただし 前者はバッテリーを搭載し、後者は自分でエネルギーを創 り出すという部分に違いがあります」とアブリアル氏は説明 する。


ただし日本のエネルギー政策には明るい未来に暗い影を落とす側面も。例えばエネルギー管理の分野がこれにあたる。ドイツや米国など他国には存在しない安全上の制約が足枷となり、確かな代替エネルギー源としての水素の開発にブレーキがかかっているからだ。「政府はコストの問題を認識しています。当社も欧米のように規格を修正していけるよう働きかけていますし、普及が進めば風向きも変わってくるはずです」とアブリアル氏は請け負う。「採算性について確証がまだ得られていない中、既に日本政府はこの事業に支援を行っています」。同氏はまた日本におけるバイオメタンの利用可能性にも注目しているという。「これは非常に面白い水素生産方法です。日本にはまだ存在しませんが、ごみや農業廃棄物からバイオメタンを抽出することができるかもしれません」
より一般的に言って、日本のエネルギー管理にはまだ見直すべき点が多い。「日本は輸入エネルギーに大きく依存しているのに、思ったほどエネルギー節約の努力をしていなことがわかって驚いたものです」とオロー氏は語る。この問題についてエンジーが掲げる目標は、世界中で証明されたエネルギー管理モードに適合するようインフラを転換していくことだ。「市場分析の結果、エネルギー効率の面で多くの課題があることを確認しました。またより効率的な暖房・冷房ネットワークの開発に向けて、自治体と協力して進めるべきことも多いと感じています」とオロー氏。エア・リキードは90年もの長きにわたりパリ都市圏の熱供給ネットワークCPCUを管理しており、同氏の言葉にはその経験に裏打ちされた重みがある。日本のもう1つの弱点は建物の断熱性能で、欧州の現行規格と比較しても明らかに水準が低い。日本の家がより快適になり、(建設費用は嵩むが結果的には)持続可能性が高まる、という好循環の創出には至っていないのが現実だ。ただしサンゴバンなど最前線の関係者が、日本国内で何年にもわたりソリューションを提案し続けているのも事実。物事がスムーズに運ばない理由? 断熱分野の変革は、通常短い周期(日本家屋の寿命は約30年)で建て替えられる日本の住宅建設のペースを根底から覆すことにつながるからだ。このような問題提起は建設業界のみならず、社会全体に関わる大きな問題である。日本の皆さん、一層の努力を!RA

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