有機食品:不毛の地

[Translate to Japonais:] organique

日本では有機食品の普及が著しく遅れており、確かな公的奨励策が待たれる

失望

来年開催される東京オリンピックに関して、 非常にがっかりすることのひとつは、2012 年のロンドンオリンピックとは異なり、選 手村で提供される食事が「有機(オーガニ ック)」認証を受けた食材とはならない見 通しであることだ。これは、日本オリンピッ ク委員会の当初の約束にも反している。 「日本の農家の生産高では、選手たちに 十分な有機食品を提供することができませ ん」と、ある業者は嘆く。 楽観主義者にとっ て、日本の有機農業は可能性を秘めた未開 拓の土地だ。一方で悲観主義者に言わせれ ば、見捨てられた荒れ地だ。

日本は有機農業の先進国の一つとなって しかるべきである。日本の消費者は食にこ だわることで世界中に知られ、その確かな 味覚で、甘味、塩味、酸味、苦味に加えて「う ま味」と呼ばれる第5の味覚を識別してい る。1970年代以降、農家が農産物を消費 者に直送し、その消費者は時おり畑作業を 手伝うという「提携」システムが一部で始ま った。小規模生産に極度に細分化され、テ ロワールと季節ごとの特徴を活用する日 本の農業は、こうした農法を採用するべき ではないか。

 

ごくわずか

日本の有機市場は成長し続けており、農林 水産省によるとその規模は2009年の1,300 億円から2017年には1,850億円に拡大し た。しかし、その潜在的な可能性を大きく 下回っていることは明らかで、他国に比べ て低調である。米有機取引協会(OTA)が 運営するサイト「GLOBAL ORGANIC TRADE GUIDE」によれば、日本の有機食品が 農産物加工食品の売上高に占める割合は 1.5%(対してフランスでは7.7%)にすぎな い。2018年には取引額で世界13位、一人当 たりの支出額では23位に後退している。

日本人が有機食品に使うお金はフランス 人の8分の1に過ぎない。さらに、有機食品 の成長には勢いが見られず「2018年の成 長率は0%と、アジア太平洋地域の平均成 長率13%を大きく下回っている」。農水省の 調査によれば、有機食品を「週に1回以上」 消費する世帯はわずか17.5%に過ぎない。 安倍晋三首相が2012年に再登板した際 に農業自由化を約束したが、これに関心を 寄せて複数の大企業が農業への参入を考 えた。とはいえこうした大企業にとっても、有機部門は優先事項ではない。例えば、フ ランスのオーガニック専門スーパー「ビオ セボン」を日本に出店した流通大手イオン は、実際に農業子会社を設立したが、従業 員160名のうち有機生産に携わるのはわ ずか10名ほどだ。

日本の有機生産に特化した農業地域は、取 るに足りないほどわずかだ。在日フランス 大使館経済部の調査によれば、2017年に は合計1万ヘクタール(農地全体の0.2%) を2,000軒の農家が有機生産に利用した。 一方フランスでは同年の有機農地面積は 200万ヘクタールで、何と日本の200倍に 達する。日本で有機認証を受けている農産 物の内訳は70%が野菜、20%が米である が、有機認証ラベルを取得している米の割 合は全体の0.1%、野菜は全体の0.35%に 過ぎない。

 

畑の外で

絶大な権力を持つ農業協同組合(JA)は、 有機部門を成長させるために十分な奨励 策を講じていない。「有機農産物の価格は 従来の農産物に比べてやや高い程度にす ぎず、生産者に有機農業への転換を促すに は十分とは言えません」と語るのは、日本の 有機農業の歴史的な中心地である茨城県で 「ほりぐち農園」を営む堀口志保さんだ。

「久松農園」を経営している久松達央さん は国の有機JAS認証を受けていない。この 認証は高額な費用がかかるうえに(年間8 万円)、複雑で、不合理としか思えないこと もある。「蚊よけキャンドルを使って生産し た農産物は有機とは見なされないなんて、 馬鹿げています」と久松氏は不満を述べる。 消費者と直接取引しているこれらの農家に とって、消費者を納得させるためには有機 JASのラベルなど必要ではない。農水省は 有機部門をわかりやすく明確化する余地 があると思われるが、それを行わず、複数 のラベルを共存させて消費者の混乱を招 いている。消費者は、一見、農薬や肥料を 大量に使用した農産物よりもおいしそうに 見えない「自然な」食品に、なぜ2倍ものお 金を払う必要があるのか理解できていな い。「農水省には経済や法律の専門家は大 勢いますが、農学の専門家をもっと雇うべ きでしょう」と農業部門を担当するヨーロ ッパの外交官は皮肉る。CY

 

 

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