風に身を委ねて

François Simon

植民地戦争についてこれほど的確に書き当てた人が他にいるだろうか。

日本では、すべてが海から来ると言われている。しかし、風は海を越えて、その匂いとともに良い知ら せも悪い知らせももたらす。食品を積んだ船荷や、爆撃を受けた戦艦の煙を上げる鉄板、焦げ付いた 肉体の匂いなどなど。国を奮い立たせる風。あるいは勢い奪う風。一方、2度にわたり日本を海からの 侵略から守ったのも風だった。フランソワ・シモンは「風」に着目し、日本についての小説を書くに至っ た。「野営中の夜、兵士たちは戦果を得て戦利品を獲得し、熱狂的な勝利を得たとしても、敵のいない 勝利を目の当たりにして途方に暮れ、疲労困憊し、虚無感を覚えることがある」。植民地戦争について これほど的確に書き当てた人が他にいるだろうか。そして、自然により結びつけられ、社会により隔た れる2人についても。「2人は機械仕掛けの鳥のように挨拶する」。フランソワ・シモンの初小説では、終 戦の時代を生きた2人の日本人の少年、リュウとタテルの生き様を追う。2人がまず目にした世界は海に 面した中国の青島だった。昔からの楽園のようなこの場所から、1945年の敗戦により追い出されてし まう。復興に沸き立つ東京の紆余曲折の中で繰り広げられる2人の悲喜劇がテーマである。この本は風 任せのほら話ではないと筆者に感想を伝えたい。

『クロサワについて:巨匠へのトリビュート』、ピーター・タスカー著、写々者社。

 

 

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