日本ワインの新たな産地、余市

Yoichi, nouvelle terre de vin japonais

北海道のテロワールから

オーガニック

オーガニックと品質。ミシュラン一つ星を獲得し たレストランTAKAOの成功は、北海道に大きな トレンドが芽生えつつあることを示している。そ れはオーガニック農法への関心の高まりや品質 重視の傾向、そして「テロワール」という極めてフ ランス的な概念だ。「そんな『空気感』に触れてい ただきたいのです」と語る高尾僚将(ともゆき)シ ェフは、フランスや東京で経験を積み札幌に店を 構えた旭川出身の40代。かつてアイヌ民族が暮 らしていた北海道の森の食材を融合した新しい スタイルのイタリア料理を提供している。「アイヌ 人々と一緒にシンプルなイタリア料理に合う食材 を追い求めています」。提供するワインはもちろ ん地元産。「ここ10年ほどで驚くほど進化しまし た」と同氏は語る。その好例が、余市のドメーヌ・ タカヒコのワインだ。余市は札幌から車で1時 間、日本海に面した人口2万人ほどの小さな町で ある。昔から果樹栽培(特にブドウ)がさかんだっ たこの町は、国内有数のブドウ産地としての地位 を確立した。ワイン造りに向けた動きが始まったのは、日本清酒株式会社が「余市ワイン」ラベル を創設した1970年代。ここ10年ほどは、規模こそ 小さいが才能溢れる生産者が多数頭角を現すな ど、さらに活況を呈している。

 

2009年創設のドメーヌ・タカヒコも、TAKAOと同 じく「テロワール」という概念を前面に押し出し ている。「そのためには地元ならではの味、自分 たちが食べるもの、感じるものに目を向ける必 要があります。懐かしさ、みたいなものもそこに 含まれますね」と、このドメーヌ(2.5ヘクタール) の創設者、曽我貴彦氏は述べている。

長野出身の曽我氏はわずか1,000万円の自己資 金を元手にこのドメーヌを設立した。彼は自慢 の起業ノウハウを広く発信しており、曽我氏の もとで研修した4人もそのモデルに倣い自身の 農場を立ち上げた。この営農モデルは当局から の支援が限られている状況の中から生まれた ものだ。力を持つ農協(JA)は無関心の域を出 ず、2010年代に入るまでは国もワインの生産に 興味を示さなかった。2011年、余市町は農林水 産大臣から「北のフルーツ王国よいちワイン特区」の認定を受け、ワイン造りに関する法律の特 例(地元で収穫された農産物を原料とするワイン の年間生産量を、法律に定める6キロリットルか ら2キロリットルに引き下げ)を受けられることと なった。

この措置に続き今では町を挙げてのサポート体 制が構築されている。「100万円までの援助に加 え、国際コンクールに参加する生産者への支援 も行っています」と、こちらも40代の齊藤啓輔(け いすけ)町長は語る。 オーガニックへの取組みも 成功要因の1つだ。前掲の高尾シェフは「15年ほ ど前からトレンドになっていますが、今では広く 浸透しています」と述べている。

もちろん品質はお墨付き。ドメーヌ・タカヒコで 生産された年間1万5千本のワイン(ピノ・ノワ ール中心)は、1本4,000円で全国販売されてい る。2013年に菅原誠人・由利子夫妻が創設した リタファーム&ワイナリーでは機械に頼らない製 法で、ブドウの絞りかすと昆布などの海産物を混 ぜた自然志向の堆肥を使用。リタ・ファームのワ インはパリのレストランPAPILLESのワインリスト にもその名を連ねている。 フィリップ・メスメール

 

 

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