ロードマップ

ロードマップ

モビリティ革命が始まった。誕生から1世紀以上が経過した今、自動車の歴史上最も大きな変革が求められている。

黎明期

コネクテッドカー、自動運転車、シェアリングカー…… 加 速的に充実する科学的知見や環境保護の要請、さらには消 費者ニーズの高まりに背中を押され、私たちは車両革命の 黎明期を迎えている。この革命が成就すれば交通・輸送価 格が大幅に下がることに加え、交通事故や有害物質の排出 もなくなり、結果として世界中の多くの人々がこれまで経験 したことのないモビリティを享受できるようになるだろう。 そのインパクトは蒸気機関や自動車、インターネットの登場 にも匹敵するもので、従来の「交通・輸送」の枠組みからの 大きな飛躍が見込まれる。この業界に携わる多くの関係者 が職業を変える必要にせまられ、モビリティの改善による生 産性の向上と購買力の移転により新たなサービスが創出さ れる可能性もある。またこの革命は働き方や消費活動、日常 生活、さらには都市のあり方を一変させるだろう。既に多くの 都市で自家用車のない未来を見据えた準備が始まっている。 幸運なことに、日仏両国には設計、製造、サービス、インフラ、 最新テクノロジーなど交通・輸送業のあらゆる分野における 世界トップレベルの企業とスタートアップが多数存在する。 一方、中国を中心とするアジア諸国や米国も、この分野に莫 大な投資を行っているようだ。こうした国々のエレクトロニ クス、電子商取引、電気通信分野の大手企業やスタートアッ プは非常に大胆な試みを重ねており、実際自動車によるモ ビリティの変革に着手している関係者の多くは米国やアジ ア発の会社である(UBER、DIDI、GRAB、OLA各社の所有車 両台数とそのサービスに従事する運転手の数は数百万に 及ぶ)。しかし勝負は始まったばかり。誰が明日の勝者とな るかはまだわからない。基本的に重要な役割を担うべきは 都市や行政当局であり、彼らがこの新たな交通・輸送様式 の規則と優先順位を決定するわけだが、ほぼ世界中に浸透 している自家用車のあり方とは異なり、ここでは各地の多 様な状況を勘案してその地域固有の規則と優先順位が決ま っていくことになるだろう。 以下に示すのは、変革の道半ばにある現状報告である。

変化を促す3つの力

シェアリングカー(もはや個人所有ではなく)、そして近い将 来登場する自動運転の市民権獲得を促す要素として、以下の 3点が挙げられる。第一に、人工知能の登場。機械が自ら学習 して知識を際限なく蓄積し、人間のように(ただし人間よりも はるかに効率的に)振る舞うという仕組みだ。こうして蓄積さ れた知識は一瞬のうちに他の車両と共有され、指数関数的 に充実していく。人工知能は瞬時に判断を下し、昼夜を問わ ず全方向に目を光らせる。ぼんやりしたり疲れたりすること はなく、もちろん酒に酔うこともない…… 第二に、目まぐるしく変化する生活習慣や顧客ニーズ。若者 にとって車はもはやステイタスではなくなった。日本では運 転免許の取得がしばしば義務とみなされているが、今では 移動時間中に他の活動(娯楽、仕事、通信)に取り組めるこ とが求められるようになっている。 第三に、環境に配慮するために変化は避けられないという こと。自家用車というのは、平均的な利用状況を考慮すると 身の丈に余る道具なのである。

都市生活におけるモビリティ

現在の自動車は高速走行可能で、ハイスピードでの事故に耐 え得る構造を有し、5~7人の乗員を運ぶことを想定して設計 されている。ところが平均的な使用の実態は乗員数1.3人、1 日あたり1時間未満で、都市部においては低速走行が一般的 だ。シートの利用率は時間にして1%にも満たないのである!  これはどう見ても大きな無駄だが、どの世帯もこれに替わ る解決法を持ち合わせていない。 こうした人々の用途にぴったり合致した自動車(例えば一人 乗りで軽量、さらに都市公害なし)が登場すれば、私たちの生 活はがらりと変わることになる。

- 単独移動時のコストが、一部の用途で3~5分の 1に縮小。

- 事故件数が大きく減少。 - 都市の騒音や公害が低減。

- 新たなサービスの創出。 - 移動時間が充実。オフィス到着時ではなく 自宅を出る時に仕事が始まる。

- 利用者数の少ない公共交通機関の代わりに、 より実用的で安全、かつ安価なオンデマンドの ドア・ツー・ドアサービスが登場。

- 地方自治体は輸送業者から道路関連インフラの 使用料を徴収し、これら業者が遵守すべき 利用条件(安全性、排出量、サービスの質など) を定める。 また以下の効果により渋滞が解消される。

- 車両とインフラ間の通信。

- アコーディオン現象がなくなり、 車間距離が次第に縮小(プラトーン走行)。

- 平均乗車率の向上。 - 平面駐車場の消滅。

- 商品、さらには乗客の輸送にドローンを使用。

このように都市全体が変化を遂げ、これに伴い都市の生活 様式も大きく変容する。

自動運転車の前に自動輸送

対象地区と用途を限定したこの種のサービスの実用化はす ぐそこまで迫っており、テクノロジーと需要の変化に応じて 拡大していく見込みである。この革命はシェアリングモビリ ティサービスの登場と共に始まった。自動サービスは、多く の都市がロボタクシーや自動運転シャトルバスの形でテス トしており、いわゆる「レベル5」の完全自動運転車が誕生す る前に、各地の状況に応じて都市部や農村部で利用できる ようになるだろう。 なお2020年頃に一部の地区において初の自動輸送サービ スが登場することと、完全自動運転車が利用できるようにな ること(こちらはもっと先の話)は似て非なるものである。車 両とその費用を複数のユーザーで分け持つようになれば、 コストが足枷になることはないだろう。 乗客はそのニーズや好み、予算などに合わせてモビリティサ ービスを選べるようになる。 自家用車の所有者も、低料金かつ制約の少ない他の手段( レンタカー、カーシェアリング、バス、電車、飛行機、タクシ ー)があれば、毎日利用する人以外は車を持たないことを 選ぶだろう。実際、パリや東京の中心部では既にこうした傾 向がみられる。 車を買った人も早期に転売するようになっており、その影響 はすぐにも現れてくるはずだ。フランスの車の平均走行距離 は、20年間で7万キロから10万5千キロに延びた。車の寿命 とともにこの距離はさらに増加するものと考えられる。フラ ンスにおける車の販売台数は新車1台に対し中古車6台の 割合となっているが、1970年代はこれが1対2だった。路上 を走る自動車の台数で見ればわずかな減少にとどまるもの ではあるが、新車市場に与える影響は大きい。いずれは自動 車愛好家や僻地の住民、使用頻度の高い人だけが車を所有 することになるだろう。

大きな変革の必要性

今日、世界の生産量の3分の1以上を占める日仏の自動車メ ーカー。彼らは独自のノウハウを確立し、技術的・商業的な 参入障壁により身を守ってきたが、その地位は新たなルー ルの確立とその適用を推し進める新規参入者により脅かさ れようとしている。新しい設計・商品化技術(ここではモビリ ティが製品というよりはむしろサービスとしてとらえられて いる)、またこのようなシェアリングエコノミーで重視される のが「データ」であることを利して、コストをかけなくても市 場参入できるようになったからだ。テスラの車は携帯電話 のようにオンラインでアップデートできるが、このような新し いメーカー(多くは米国と中国の企業)は電気自動車に注 力しており、年ではなく月単位で開発を進めている。他の関 係各社(GAFA[GOOGLE、APPLE、FACEBOOK、AMAZON] やBAT[BAIDU、ALIBABA、TENCENT]など)もこの新たな黄 金郷に身を投じ、顧客体験に軸足を置いた独自のバリュー チェーンを提案している。 一方、従来のメーカーには各社の勢力圏内に張り巡らされ たネットワークという点で一日の長があり、地域に最も適し たモノや人のモビリティサービスを提案する際にはこれが大 きな強みになる。また1世紀にわたる進化の歴史に根ざした 独自の経験も彼らの武器だと言えよう。だからこそ従来のメ ーカーにもこの革命に備えた変化が求められている。この変 化に必要な条件として、以下の3点が挙げられる。

- 他社との違いを打ち出せるバリューチェーンの部分、テ クノロジーやサービスの内容などを、ブランドイメージ やパートナーシップを踏まえて決定すること。

- 自社中心で動く大企業から、地域の事業者や地方自治 体とのパートナーシップに基づき最適なソリューション を提案できる企業に生まれ変わること。グローバルなス キルに立脚しつつ、目線を変えて地域の資源を利用する ことが重要。

- 最新ツール(コンカレントエンジニアリング、ジェネレー ティブ・デザイン、バーチャルシミュレーション/ビジュ アライゼーション、データアナリティクスなど)を利用し て、開発速度を大幅に早めること。

こうした3つの変化には働き方革命と、関連する情報処理ツ ールの大規模な変革が求められる。 大きな強みを有する日仏両国の関係者にとっては、まさに これからの速やかな取り組みが未来の市場を制することに つながるだろう。

ギヨーム・ジェロンドー、ダッソー・システムズ 戦略的ビジ ネスディベロップメント日本担当、自動車・輸送機械・モビリ ティ業界アジア担当ヴァイス・プレジデント

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