日本人というデリケートなテーマ

『Les Japonais (lignes de vie d'un peuple)[仮訳]日本人(ある国民の生命線)

自分を魅了して止まないこの国、日本のことをもっと知りたい――それが著者ラファエル・ランギヨン=オーセルの願いだった。そのために彼が話しを聞いたのは、この国の現代を映す万華鏡であり、同時代の生き証人たる多方面にわたる23人の日本人たちだった。著者がこのインタビューから導き出した結論は、「右へならえ」のイメージが強いこの国の意外なほどの多様性、そして「ひしめき合う(fourmille)」(この動詞の使い方には要注意)その社会の様相である。この力作の序文で著者は「今では格差が広がり、女性が権利を主張し、マイノリティが声を上げるようになっている。(中略)日本という国、そして日本人も変わりつつあるのだ。しかも彼らの目指す方向は驚くほど多様である」と述べた。だが本書の登場人物には孤独感という共通項がある。変わりつつあるとはいえ、日本をむしろ超保守的な社会と見ることもあながち的外れとは言えないだろう。他の民主主義国家における社会のあり方や社会と個人との関係性が日々刻々と移りゆく中、日本は変化(死刑廃止、移民問題、権力、男女平等……)を頑なに拒み、現状維持のために「変わりつつある」ふりをしているだけかもしれない。


『Les Japonais (lignes de vie d'un peuple)[仮訳]日本人(ある国民の生命線)』、Ateliers Henry Dougier出版

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