中小企業の明るい未来

中小企業の明るい未来

日本に進出する外国中小企業が増加

新天地

日本は大企業の独壇場――世界第3位の経済大 国が話題に上ると、決まって聞こえてくるのがそ んな声だった。事実、フランスを始めとする世界 各国のグローバル企業グループが、セクターを 問わず日本に大挙進出している。多くの場合、こ れら大企業にとって日本はトップ5の一角を占め る重要市場だ。一方の中小企業は、市場に関す る情報不足や先入観などもあり、市場開拓に求 められる時間や金銭面の負担を考えて二の足を 踏むケースが多かった。

ところが、ここに来て日本に目を向ける外国の 中小企業が増えてきた。円安、変化を遂げつつ ある巨大市場の将来性、外国の製品やサービ スに対する日本人の好奇心などが、これまで日 本には目もくれなかった企業の関心を強く引 きつけている。2018年、在日フランス商工会議 所(CCI)でビジネスサポートを担当している商 務部(SAE)は、商工会議所100周年にちなんで 「100 PME AU JAPON(日本における中小企業 100社)」ミッションを開催した。「 去る11月19日 に格調高い日経ホールで開催された日仏ビジネ スサミットの直後、サミット参加企業向けにそれ ぞれ5件の商談会を手配しました」と語るのは、 商務部のエドゥアール・カーズ。「現在CCIを業務 拠点とする企業23社のうち、中小企業はこの1年 で6社から9社に増えています。つまるところ子会 社の設立はそんなに難しいことではありません。 かかる日数は45日ほど、基本料金は26万6500 円です」。

エドゥアール・カーズは、フランス国際企業イン ターンシップ・プログラム(VIE[VOLONTARIAT INTERNATIONAL EN ENTREPRISES:国際企業 ボランティア])制度が中小企業の日本進出を一 層促すだろうと予測する。同プログラムに参加す るのは、あらゆる学歴を有しエネルギッシュで熱 意に溢れるフランスの若者たち。日本への第一 歩を踏み出そうとする中小企業が、コストを抑え ながら活用できる優れた人材だ。「現在、日本で はVIE 200名が100社で働いており、人数は2011 年から25%増加しました。その大半は大企業に 雇用されています。VIEを念頭に置いて日本進出 を考える中小企業は多くなかったのですが、こ の制度を活用するケースも次第に増えていくで しょう」とエドゥアール・カーズは述べている。

候補12社

日本における中小企業の成功を後押しするも う1つのプログラムが、去る11月に開催された 「LIFESTYLE AU JAPON(フレンチライフスタ イル来日ミッション)」だ。フランス公的投資銀行 (BPIフランス)がフランス貿易投資庁‐ビジネ スフランス、コンサルティング会社PMCと連携し て開催したこのイベントには、初来日の企業を 含むライフスタイル分野のフランス企業12社が 参加し、日本市場への進出に向けその第一歩を 踏み出した。今回のミッションのために東京を 訪れたBPIフランスの執行役員パトリス・ベゲ氏 は「100社を超える応募がありました」と語る。 高級紳士靴ブランド「フィンズベリー」のアルノ ー・ブリュイヨン社長は「4回目の来日になります が、日本は間違いなく当社の2019年世界戦略に 含まれる国です」と明かす。自らの信念を貫く社 長は(17歳で同ブランドの販売員として雇用さ れ、25歳でフランチャイズ店を経営、35歳でブラ ンドを買収した)、日本の「販売業者を探し求め」 ているという。日本人は同ブランドのフランス国 内店舗における外国人客売上で堂々の第2位。 現在80店舗を展開するフィンズベリーだが、外 国店舗は20ヵ所しかない。しかし「お手頃価格 の高級品」セグメントで同社が提供する140種類 のシューズは、今の日本市場にもってこいの製 品だ。11月末に開催されたこのイベントに、BPI フランスが選定した他の11社とともに参加した ブリュイヨン氏は、報道関係者と日本人バイヤー を前に熱心な製品PRを行った。そこにはこうし た光景を温かく見守るシャルル・ズナティ氏の姿 も。20年前、東京で誕生したピエール・エルメ・ パリの共同創設者である。「東京で誕生した」こ とがみそである。「名前はピエール・エルメ・パリ ですが、弊社はフランスの会社であると同時に 日本の会社でもあるのです」と語るズナティ氏。 日本に進出した外国の中小企業に続く形で、い ずれは外国人が設立する日本生まれの中小企 業が誕生し、やがて世界に進出していく――彼 の話を聞いていると、そんな期待が膨らんでく る。 

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