インタビュー

Business Regards Croisés - Sai Inc.:AIはストーリーテラーに取って代われるのか?

「Business - Regards Croisés France-Japon」新エピソードでは、日本を拠点にコミュニケーション事業を展開するSAI Inc.(Struggling Artists International)の創業者、ダンカン氏を紹介します。フランス、カナダ、日本での経験を持つダンカン氏は、長年にわたり言語や文化の違いを越えたコミュニケーションに携わってきました。企業のストーリーテリング、多言語コミュニケーション、映像制作、そして急速に存在感を高めるAIについて語るとともに、効果的なコミュニケーションの本質は、最終的には「人を理解すること」にあると説明します。

コミュニケーションを創造的なプロセスとして捉える

ダンカン氏のコミュニケーションへの関心は、幼少期から親しんできた語学や演劇を通じて芽生えました。フランスで哲学を学び、日本での生活を経験する中で、言語や文化の間に存在するコミュニケーションの壁に強い関心を持つようになります。1991年にはSAI Inc.を設立し、企業コミュニケーション、多言語コピーライティング、ナレーションなどの分野で事業をスタートしました。

ダンカン氏にとって、翻訳とは単に別の言語で同じ言葉を探すことではありません。企業のメッセージを異なる言語で伝えることは、同じ考えを表現する方法がいくつも存在する、創造的なプロセスです。重要なのは言葉そのものを訳すことではなく、その言葉の背後にある意味や意図を伝えることだといいます。

企業映像からストーリーテリングへ

その後、SAI Inc.は企業向け映像制作にも事業を広げました。長年にわたって台本やナレーションに携わる中で、ダンカン氏は従来型の企業映像に次第に物足りなさを感じ、異なるアプローチを模索するようになります。

大きな転機となったのが、がんや重い病気と向き合う子どもたちとその家族を支援する日本の団体、Shine On Kidsとの仕事でした。この経験を通じて、彼はインタビューを中心とした独自の手法を確立していきます。その基本となるのは、「その組織は何をしているのか。そして、なぜそれをしているのか」というシンプルな問いです。

「映像の役割は、すべての詳細を伝えることではなく、その組織を動かしているキーパーソンの姿を垣間見せることです。」

ダンカン氏にとって、映像の役割は、組織の背後にいる人々、その動機、情熱、そして仕事に見いだしている意味を伝えることなのです。

あらゆる組織の中にあるストーリーを見つける

SAI Inc.のアプローチは、あらかじめ用意された台本よりも、対話を重視しています。ダンカン氏は経営者や社員にインタビューし、相手の話に耳を傾けながら、本当に伝えたいことを探っていきます。そして、会話の中から最も印象的で伝える力のある部分を選び、編集を通してストーリーを構築します。

この手法には、日本で外国人として仕事をしてきた彼の立場も関係しています。組織の中にいる人にとっては当たり前に思えるようなシンプルな質問を投げかけることで、インタビューを受ける人が、自分たちの仕事を初めて知る人に説明するような視点を引き出します。

高度なテクノロジーを扱う企業であっても、一見するとごく普通の商品をつくる企業であっても、そこには必ず発見すべきストーリーと、その仕事に取り組む個人の思いがあるとダンカン氏は考えています。彼の役割は情熱をつくり出すことではなく、そこにある情熱を見つけることなのです。

AIとコミュニケーションの未来

人工知能(AI)は、企業のコミュニケーションのあり方も大きく変えつつあります。ダンカン氏はAIの可能性を高く評価する一方で、AIは人間の専門性に取って代わるものではなく、あくまでツールとして活用すべきだと考えています。

彼が「AI plus NI」と呼ぶアプローチは、Artificial Intelligence(人工知能)とNatural Intelligence(自然知能)を組み合わせるものです。AIによって効率性を高めながら、最終的にはコミュニケーションの専門家が判断力、創造性、そして細かなニュアンスを加えていくという考え方です。

国際的に事業を展開する企業にとって、AIは複数の言語にまたがるコミュニケーションの一貫性を高めるうえでも役立ちます。ただし、そのためには企業独自のコンテンツやメッセージを適切に学習・参照させることが重要です。AIにコミュニケーションを全面的に委ねてしまえば、インターネット上に存在する平均的な表現に引っ張られ、結果として「平均的なメッセージ」になってしまう危険があります。

「企業としてコミュニケーションを単純にAIに任せるなら、それは未来の凡庸さを選ぶことになります。」

ダンカン氏にとって重要なのは、AIを賢く活用しながらも、コミュニケーションに不可欠な人間らしさを失わないことです。

文化を越えて、人と人をつなぐ

SAI Inc.の仕事には、ダンカン氏が考える国際コミュニケーションのあり方も反映されています。文化の違いに注目するのではなく、人間に共通する部分こそ、話す言語や住んでいる国以上に重要だと彼は考えています。

この考え方のもと、SAI Inc.は国際的なプロジェクトにおいても、常にメッセージを発する「人」に焦点を当てています。最近では、日本の自動車メーカーのプロジェクトで、15カ国、7言語にわたるインタビューをもとに20本の映像を制作。世界各地の人々がそのブランドをどのように捉えているのかを、クライアントが理解するためのコンテンツを作りました。

多言語コピーライティング、企業映像、スピーチやプレゼンテーション、そしてAIを活用したコミュニケーションまで、今回のエピソードでは、SAI Inc.が取り組む独自のストーリーテリングの考え方を紹介します。その根底にあるのは、言葉を慎重に選ぶこと、ありのままの対話を大切にすること、そして、どのような組織にも伝える価値のある「人間のストーリー」が存在するという信念です。

SAI INC.

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