スマートエネルギーウィーク東京 ソリューション、あるいは補完エネルギーとしての水素燃料

2月27日から3月1日に東京で開催されたスマートエネルギーウィーク東京2019で、水素燃料電池システムを製造する仏シンビオフセルCEOのファビオ・フェラーリ氏は「水素分野をリードする国は日本である」と述べた。

例年どおり、多くの出展者(今回は1,590社が参加。中でも中国、米国、ドイツ、日本からの出展が際立つ)が、エネルギー問題に対する「自社の」ソリューションをわれ先に紹介しようとしのぎを削った。バッテリー、燃料電池、太陽光、風力、バイオマス......しかし日本で常に王座を占めるのは水素だ。現在、水素燃料電池車の普及台数は2千台、消費世帯数は25万世帯と当初の目標には遠く及ばず、水素燃料の普及に明らかな鈍化が見られるものの、その勢いは弱まっていない。無謀なチャレンジなのだろうか。水素が補完的なエネルギーである限り、そして規模の経済性が働かない今日の社会においては、そうとは言い切れない。ファビオ・フェラーリ氏に話を伺った。

貴社のソリューションについて教えてください。

シンビオフセルは水素の燃料電池システムを製造しています。これにより、バッテリーを装備した電気自動車に3分で充填でき、航続距離を2倍にすることが可能です(たとえばルノー・カングーZE H2の場合400キロメートル)。

自動車メーカーのトヨタやホンダは燃料電池自動車の大手ですが、今では蓄電池に関心を向けています。水素燃料に向けた取り組みの低下を懸念していますか?

いいえ。なぜなら、将来は再生可能エネルギーによるオール電化になるからです。現在、交通手段のエネルギーの97%が化石燃料(多くは石油)によるものなので、他に選択肢はありません。つまり再生可能エネルギーを開発し、交通のためにそのエネルギーをストックしなければならないのです。ストックの方法は2つあります。蓄電池、そして水素です。前者は都市の中など短い距離を走行する自動車に向いています。重量のある自動車や長時間走行する自動車にとっては、バッテリーでは限界があります。ガソリン50リットルで得られるエネルギーのために、20倍の重量のバッテリーを必要とします。つまり1トンです!水素はそれに比べて非常に軽いのです。そのため長距離用トラックや長時間使用する自動車に向いています。つまりは、蓄電池と水素は相互補完的な関係なのです。

水素燃料の普及は、化石燃料の低い価格に影響を受けていますか?

現在のところはそうです。しかし、化石燃料の価格は値上がりを避けられません。なぜなら採掘するのにどんどん遠くまで行かなければならず、最終的にはなくなってしまうことがわかっているからです。それと並行して、再生可能エネルギーの価格がますます下がるという善循環に入り、「エコ」な水素をより競争的な価格で製造することが可能になります(現在、大半の水素は天然ガスから製造されている)。本土の電気網とつながっていないフランスの離島地域(ZNI)では、すでに価格競争が起こっています。

現在、発展の軸とするものは何ですか?

私たちはもちろんより軽くより安い製品を追求していますが、今の課題はむしろ産業化の段階への移行です。現在、燃料電池車の生産は年間数千台ですが、今より安い価格を実現するためには5万台を越えなければなりません。もちろん同時に、水素充填のインフラを整備することも必要です。日本で既に行われていますが、フランスでも2018年6月の政府水素計画によって整備が進められています。

日本はステーションの設置費用が高く、採算が合わないと批判されますが、妥当でしょうか?

地震国である日本の土地は、他国よりも用心して扱わなければなりません。ガソリンスタンド同様に、水素ステーションにも当てはまることです。しかし、ステーションの採算性を分析するための根本的な基準は、その使い方です。通常のステーションは1日に水素を50~70キロ供給すれば採算性を確保できるのです。

中国に関してはいかがですか?

中国では水素燃料電池車を国が支援しており、用途によって補助金が支給されます。たとえば44トンの水素燃料電池トラックは100万元、つまり1万ユーロまで補助金を受けることができます。

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