コルベール、再び
コルベール委員会、日本を拠点に影響力拡大を目指す
ゲランのコルベール委員会
コルベール委員会は著名人の加盟する会員制組織である。ジャン・ジャック・ゲランの先見の明により、1954年に設立されたこの委員会には、パリ・オペラ座、ルーブル美術館、ヴェルサイユ宮殿などフランスのラグジュアリー界を代表する名門が官民双方から加入している。主要な81の有名ブランドが加盟、その売上高は年間400億ユーロに達し、輸出総売上高 の85%を占める。コルベール委員会の使命は、ラグジュアリー 産業の振興とともに、大小様々な匠の技やそのノウハウを 世界のできるだけ多くの人にアピールしていくことにある。 「ジャン・バティスト・コルベールは、フランスにおけるユニバーサリズムの象徴的人物で、フランス国立東洋言語文化学院やフランス東インド会社の創設者です。彼は世界に進出するなら世界中の言葉を身に着けなければならないという言葉を残しています」と現在当委員会の日本支部長を務めるシャネル株式会社代表取締役社長リシャール・コラス氏は説明する。コルベール委員会は層の厚さのある組織ではあるが、まだ知る人ぞ知る存在で一般的な知名度は低い。しかし、日本での活動が認知度向上の鍵になると期待は高まる。委員会はかなり前から日本に着目していた。「当委員会の 日本への進出は1964年に遡ります」と1年前から委員会の会長を務めるHermès International, S.A. (エルメス)社長ギヨ ーム・ドゥ・セーヌ氏は説明する。「匠の技を人間国宝という形で評価する日本のシステムに若干のジェラシーを感じますね」と東京滞在時に本音を伺わせた。
プレヴェール風の目録
1985年、バブル景気に沸く日本で、コルベール委員会はその名の由来となったコルベールの没後300周年記念行事として、東京都庭園美術館で歴史に残る展覧会「フランス・コルベール展」を開催した。展覧会カタログの表紙には、フランス人アーティストのアルマン・フェルナンデス氏のサインと彼の 熱烈なファンである元フランス大統領ジャック・シラク氏による次のような序文が記されている。「作品アーティストは、 もはや夢を失った世界に、再び夢の世界を再現しようとしています」。ブロンズ、ジュエリー、レース、金銀細工など、あらゆるものがアートとしてスポットライトを浴びた。目録は作家 プレヴェールの作風を忠実に再現し、芸術家のジャン・ コクトーと客船「ノルマンディー号」と並んでプレヴェールが描かれた。2014年、コルベール委員会の創立60周年を記念し、フランスのSF作家6名がラグジュアリーの創造する60年後のユートピアをイメージした小説を発表した。「過去ではなく未来に目を向けたいと思ったのです」とギヨーム・ドゥ・セーヌ氏は語る。そして、「2074年、夢の世界」と題されたこのユートピアは日本で3D化されることになる。委員会は東京芸術 大学に当作をモデルにした作品の制作をもちかけた。「作品の世界をビジュアル化したいのです」とリシャール・コラス氏は述べる。コルベール委員会はコンペティションを実施、 最終的に50件の応募があった。昨年11月、作家6名のうち3名が東京で日本の若い応募アーティストに会う機会があった。その後、学生たちは絵画制作、彫刻、カッティング、写真撮影などに取り組んでいる。委員会は今年6月に東京で完成作品の展示会を予定している。また同じ月、コルベール委員会は東京で歴史的な会合を開催する。最優秀作品3点は、Foire Internationale d'Art Contemporain Paris(国際コンテンポラリーアートフェア、略称FIAC)、Fondation Cartier pour l'Art Contemporain(カルティエ現代美術財団)、Fondation Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン財団)などフランスの著名な 施設で紹介されることになっている。「若者を対象とした 野心的なプロジェクトです。3つに限らず、50の作品全てを見てどんな感動を味わえるのか楽しみです」と大学教授で アーティストの八谷和彦氏は語る。