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三越伊勢丹ホールディングス:日本一の百貨店としての誇り
2008年、三越と伊勢丹、日本を代表する二つの百貨店が経営統合し、「三越伊勢丹ホールディングス」が誕生した。1673年創業の呉服店「越後屋」がルーツの三越は、1904年に株式会社三越呉服店を設立し、「デパートメントストア宣言」を行う。これが日本の百貨店のはじまりと言われている。それから110年経った2014年、日本橋三越本店は百貨店の新しいかたちを求め、ファッション以外の暮らしを彩る美意識を伝えることを目的に「カルチャーリゾート百貨店宣言」を行った。また本館は、2016年5月に百貨店建築として初の重要文化財に指定された。一方の伊勢丹は今年、創業130周年を迎える。売上高、入店客数共に日本一を誇る伊勢丹は、世界が注目する百貨店である。新宿店本館は「世界最高のファッションミュージアム」を目指し、大規模な改装を行い2013年3月に婦人服フロアグランド・オープンした。「ファッションをアートとして捉え、毎日来ても驚きと感動を与えるスペースとして、新しい環境空間を演出しています。」と、営業本部MD戦略部MD計画担当部長の中込哲氏は説明する。今も三越、伊勢丹両店は独自のアイデンティティーを持ち続け、進む道こそ異なるが、「お客様第一」という精神を共有している。
三越伊勢丹HDとフランスとの関係について、中込氏はこう語る。「日本人は昔からフランスの歴史や文化に強い憧れを抱いています。これまでは伊勢丹がフランスの文化を発信する側でしたが、フランスへの旅行客が増え、フランスに精通している日本人も増えました。現在はインターネット等を通じお客さまもご自身の好きなものに対してご自分で調べる
方が多くなってきており、提案する百貨店としてもブランドのもつ歴史や文化企業ポリシー、作り手のこだわり(素材や製法など)など十分提案する必要があります。そのような形で提案したブランドは、例え初登場のものでも大変人気を得ます。」と中込氏は言う。
2015年から在日フランス商工会議所と連携し、伊勢丹新宿店にて『ボンジュール・フランス』を開催している。食やリビング、婦人服の新しいブランドを紹介しながら、フランスの文化を発信するイベントである。出展業者を決定する際に伊勢丹のバイヤーが着目するのは、そのブランドの持つストーリーやこだわりだそうだ。パリだけではなくフランスの地方の魅力も紹介していきたいです。」と中込氏は話す。
三越伊勢丹グループは、昨年2015年に新たなグローバル戦略において「クールジャパン」を発信しているが、2016年秋、パリ日本文化会館1階に情報を収集する拠点として、新たなショップを出店する予定だ。日本の良いモノ・コトを始め、販売サービス・環境に至るまで、「世界に通じる日本の良さ」を現地顧客に向けて提案する。「世界に通じる日本の良さ」の発信に向け、三越伊勢丹は社員の育成にも力を入れている。「おもてなしの心と高い専門知識を持ち、お客さまのご期待に感動レベルで応えることができる人材」を育成するために、様々な教育・研修を行っている。またCSR活動にも積極的に取り組んでいる。中でも女性の活躍推進に力を入れており、連結従業員数12000人のうち、女性が約8割を占めている。育児休暇やシフト制の勤務体制は、業界の中でもナンバーワンの水準を誇り、東洋経済『CSR企業総覧』(2015年)で、「女性が働きやすい会社ランキング」で堂々1位に選ばれた。
他百貨店との違いについて伺うと、中込氏は次のように答えた。「モノづくりに対するこだわりは、どの百貨店より勝っている自信があります。素材や製法、産地へのこだわりは表面的なものではなく、バイヤーは実際に作り手のもとへ足を運び、常にモノへの探究心を持っています。」「日本の百貨店業界が衰退した」と言われる中、300年以上の歴史を誇る三越伊勢丹グループの成功の背景には、こうした地道な努力がある。