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企業におけるダイバーシティの利点―フランスの事例から
2018年の第2回人事委員会のテーマは企業における多様性だった。このイベントは在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本と在日フランス商工会議所の共催で行なわれ、60人以上が参加した。パネリストはESSECのリーダーシップ&ダイバーシティ講座座長高木順子氏、排除と闘うFACE財団のキャトリンヌ・トリッポン氏、日本においてLGBTの権利を擁護する株式会社トロワ・クルールの創設者、増原裕子氏の3名だった。在日フランス大使館文化参事官のピエール・コリオ氏の基調講演の後、各パネリストはダイバーシティという、話題にはなるけれども具体的な行動がまだ余りとられていない問題についてそれぞれの見解を披露した。
高木順子氏はダイバーシティに関する議論がフランスでは比較的新しいことを強調した。古くから少数派が明確に定義され名付けられているアメリカ合州国と違い、フランスではいくつかのタブーが、とりわけ民族問題について存続している。2004年以降はしかし、状況が推移し、同年、4000社の企業が「ダイバーシティ憲章」に署名し、2015年にできた「ダイバーシティ・ラベル」が既に350社の企業に付与された。フランスの反差別法は、法的な問題をクリアするためはもとより、コーポレートイメージを向上させる上でも、企業に自覚を持たせた。例えば監査役会の40%は女性でなければならず、また、従業員の6%は障碍者でなければならない。ただ、ダイバーシティがもたらす実質的なメリット(例えば市場の新しいセグメントへのアクセス)について、まだまだ経営者や管理職を説得する必要がある。女性の受け容れを向上させるべく、フランスの多くの企業は、「Women at Renault」やトタル社の「Twice」などのネットワーク、ロレアル社の「Women in science」賞など、女性の利点を強調したイニスィアティヴを実施した。いま、目に見えない違い、即ち障碍(目に見える障碍とは限らない)と性的指向に対しても、同じ努力を適用することが不可欠である。
LGBTのテーマに関して、キャトリンヌ・トリッポン氏は、個人に関わり、計測することができないテーマについて話すのは難しいということを想起した。フランスでは6%から10%までの国民がLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランス)と定義され得る。88%の従業員が職場において同性愛者差別的な発言を受けたり聞いたりしている。67%の従業員は、LGBTであるかどうかに関わらず、いわゆる「カミングアウト」をすると職場において望ましくない結果をもたらすと考えている。その結果、多くのLGBTはLGBTであることを隠し、私生活を分かち合うことを諦め、ストレスと孤立化を招き、ある種の自粛に行き着く(例えば拒絶されるのを恐れて啓発運動を敢えて願わないなど)。LGBTと職場という問題は、採用枠の問題以上に、LGBTであることを公にしたいと願っている人々をサポートすることと、LGBTが他者と同様に尊重されるべきであるということだ。そのためには、この問題について経営者自身による模範的な振る舞いと定期的な発言が必要である。これは雇用主としての魅力を高めるものであり、また、避けることのできない企業の社会的責任でもある。このような方向性で、トリッポン氏がスポークスマンを務める「Association l’Autre Cercle」は「LGBT行動憲章」を作り、Vinci、Accenture、BNP Paribasを始めとする企業や大学、市町村など86の団体が署名した。
フランスの事例が紹介されたと、増原裕子氏より日本の事例が紹介された。女性が抱える問題についてはよく話題になるが、LGBTの権利が話題に上るようになったのは政府が「ダイバーシティ2.0」を打ち出してからである。国連の持続的発展の目標や、差別反対のオリンピック憲章など、世界の趨勢を早く追随することが日本にとって必要である。「Work with Pride」というラベルが作られ、2017年には100社を超える企業がこの認証を受けた。トリッポン氏と同様、増原氏も職場における安心をLGBTにもたらすことを強調した。日本では13人に1人がLGBTであると推測され、その80%がカミング・アウトしておらず、職場における業務に差し障る、精神的な苦痛を抱えながらLGBTであることを隠している。異性愛者でLGBTに理解を示している人々は、理解者であることを表明しなければならない。そのために「LGBT Ally」というステッカーを増原氏が大衆に配った。そのステッカーはKDDI、JAL、など多くの企業のためにカスタマイズされた。
さらに詳しい情報についてはバレリー・コンシカー(emploi(@)ccifj.or.jp)もしくはサラ・ヴァンディ(sarah.vandy(@)institutfrancais.jp)までお問い合わせください。
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