インタビュー
知的な協力関係

フランスと日本が特許の認可制度のハーモナイズを進めている。目立たないが、重要な動きである。フランス産業財産権庁(INPI)のパスカル・フォール局長に話をうかがった。
今年の春に訪日された理由は何ですか?
今回の訪日は、協力覚書(MOC)の締結を目的としたものでした。特許審査官や特許関連情報の交換を実施するためのもので、特許手続における人工知能の利用に関する情報も含まれています。特許審査官の交換は今年の夏に行われる予定です。
商標および地理的表示も、両国にとって重要なテーマではありますが、日本国特許庁(JPO)との会合の議題ではありませんでした。
ご担当の分野において日本はどのような位置づけでしょうか?
日本は、知的財産権における世界で主要な当事者です。JPOは、知的財産権を司る5つの最重要庁で構成されるグループの「五庁(IP5) 」に属しているのです。
JPOは、現行の特許取得件数において、第一位のアメリカ、第二位でほぼ対等の中国に続く、世界第三位の庁です。また、2017年の特許出願件数においても、やはりアメリカと中国に続く、世界第三位に相当します。
ところが、2015年以降、日本における特許出願件数は、ほんのわずかな伸びを示すか、あるいはまったく伸びていません。JPOは、この減少の理由をふたつ挙げています。ひとつは、日本人が量よりも質を重視するためというもの、もうひとつが、日本人の海外での特許出願が増えていることです。2014年以降、日本からの海外出願特許件数はコンスタントに増えています。
一般的に、知的財産権は、日本において非常に大きな関心を集めています。だからこそ、全閣僚が出席する知的財産戦略本部の会合において、安倍晋三首相自らが本部長を毎年務めているのです。
フランスについてはいかがですか?
フランスでは、2019年にPACTE法(企業の成長・変革のための行動計画に関する法)が可決されました。12月に運用が開始、今年7月までに段階的に施行されていくこの法律により、知的財産権も戦略的な課題になりました。イノベーションの保護は、グローバル化した経済において不可欠です。そこでは、イノベーションが、競争力の鍵を握る要因となります。PACTE法により、フランスおよびINPIは、自らの制度と日本のような最重要庁の制度をハーモナイズさせることが可能になりました。
ちなみに、フランスは日本における第六位の外国特許出願者であり、日本はフランスにおける第二位の外国特許出願者です。JPOは、五大陸の44の特許庁と協定を結んでいます。日本における特許出願者トップ20ヶ国のうち、14ヶ国がJPOと特許審査ハイウェイ(PPH)の協定を結んでいます。間違いなく、PPHは、日仏どちらの利用者の興味も惹くことになるでしょう。
今回のMOCにより、何が変わりますか?
MOCの締結は、日本とのPPHを実現するための第一段階です。実現すれば、INPIにとって初めてのPPHになります。ご存知の通り、PPHは、特許庁間の特許手続の相互承認を可能にする制度です。それにより、作業リスクやコストの分散化、そして特許発行手続の迅速化が可能になります。
このような迅速化は、企業にとって大きなメリットです。
ただし、こうした手続の相互承認は、特許発行の相互承認ではありませんので、注意してください。それぞれの国が最終決定権を有するのは変わりません。