セクター&市場
APMスタディツアー:日本におけるイノベーション、産業、マネジメントを探る
2025年に開催されている大阪・関西万博視察に関連して、フランス・ノルマンディー地方から来日した経営者18名で構成される「経営向上協会(APM)」の代表団が、日本国内で1週間にわたるスタディツアーを実施。在日フランス商工会議所との連携のもと、日本のビジネスエコシステムに直接触れる機会を得た。
本プログラムの目的は、特にマネジメント、イノベーション、産業分野における日本の先進的な取り組みを理解することにあり、現地のキープレイヤーとの対話や視察を通じて、多角的な視点からの学びを深めることに焦点を当てた。
東京:イノベーションと産業の中心地
前半のプログラムは東京にて実施され、4日間にわたり、セミナーや企業訪問を通じて日本の多様な産業分野における最前線の取り組みを視察した。
- 1日目:クレディ・アグリコル東京オフィスにてセミナーを実施
初日はクレディ・アグリコル東京オフィスにて終日セミナーを開催。以下の登壇者から、それぞれの専門的視点による講演が行われた。
- 駐日フランス大使館財務参事官・経済部 エステル・ティエボー
- 在日フランス商工会議所・事業開発部 メディ・マタニュ
- ブイグ(Bouygues Asia) ピエール・ムスティエール
- Japan Advisory Servicesフランソワ=グザヴィエ・リエナール
講演では、日本経済の構造、日本市場へのアプローチ、現地における企業文化や経営のリアリティについて、具体的な知見が共有された。
- 2日目:大林組技術研究所を訪問
2日目は大林組技術研究所を訪問し、日本の建設業界の最前線を見学した。建設中の2025年大阪万博のシンボル「大屋根リング」に関するプレゼンテーションに加え、日本の都市開発におけるテクノロジーと伝統の融合を探る視察となった。
- 3日目:三菱自動車にてモビリティの未来を考察
3日目には三菱自動車を訪問。電動化、自動運転、サステナブルモビリティといったテーマについて、同社の中長期戦略や研究開発の取り組みに関する説明を受けた。日本の自動車産業が環境対応と技術革新の両立にどのように取り組んでいるかを学ぶ機会となった。
- 4日目:日本製鉄・鹿島製鉄所を見学
東京での最終日は、日本製鉄の鹿島製鉄所を訪問。高炉(BF)および転炉(BOF)を活用した製鋼プロセスを間近で見学し、日本の重工業の高度な技術力と規模、さらに環境への配慮に基づく運営体制について理解を深めた。
大阪:国際連携と地域産業の革新
後半は大阪へ移動し、関西におけるグローバルビジネスと産業革新の現場を視察。地域とグローバルをつなぐ新たな展開を探った。
- 5日目:在日フランス商工会議所の関西デスクでの対話と地域理解の深化
在日フランス商工会議所の関西デスクにて、関西エアポート代表取締役社長・在日フランス商工会議所の理事のブノア・リュロと意見交換を実施。日本で最も利用者の多い空港のひとつである関西国際空港の運営、災害管理戦略、空港施設における利用者体験向上のためのイノベーションなど、多岐にわたるテーマが取り上げられた。
続いて、在日フランス商工会議所の地域拠点代表 兼 関西デスクマネージャー ジャン=フランソワ・ローシュより、地方におけるフランス企業支援の取り組みや商工会議所の活動について説明があった。
- 6日目:大阪・関西万博2025 現地視察
翌日は夢洲に建設中の大阪・関西万博の会場を訪問。フランス館ではパートナーシップディレクターのソフィー・ブランクールの案内で見学し、フランスの優れた文化・技術・芸術を紹介する没入型プレゼンテーションを体験した。フランス館のテーマである「愛への賛歌」は、つながり、持続可能性、革新という価値を反映している。
その後、日本、ベルギー、イタリア、中国など各国のパビリオンも訪問。持続可能な開発、デジタル変革、国際協力といった共通テーマ「未来をデザインする」に対する各国のアプローチを探る機会となった。
つながり、学び、イノベーションのまたとない機会
このスタディツアーは、単なる産業視察にとどまらず、フランスと日本のビジネス関係を深めると同時にグローバルリーダーシップ、戦略的イノベーション、異文化コラボレーションについての新たな視点を得る貴重な機会となった。