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藤田嗣治をめぐる講演 ― 角田昌彦弁護士、日仏友好の象徴を語る

2025年6月21日、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の芸術と精神に捧げられた特別展にあわせ、国際弁護士・角田昌彦氏による講演が開催された。藤田の妻・君代夫人およびその相続人の顧問弁護士として三十余年にわたり伴走してきた角田氏は、藤田嗣治の遺骨のフランス帰還や、本人の設計による「平和の聖母礼拝堂(ランス市)」の実現に尽力した人物である。礼拝堂は、いまや日仏友好の象徴として知られている。

藤田の遺族からは、約二千点におよぶ遺品がランス市に寄贈され、市は藤田芸術を顕彰する初の美術館を開設することを決定した。角田氏は、礼拝堂と美術館こそが藤田の晩年の精神を体現するものだと強調する。世に知られる裸婦や猫の作品から距離を置き、彼はやがて宗教画に専心し、「平和」という普遍的なテーマに自らの芸術を捧げていったのである。

講演の中で角田氏は、自らの記憶、藤田の日記の一節、そして君代夫人の証言を交えて語った。その言葉から浮かび上がるのは、芸術と信仰を通じて精神の安らぎを求め、普遍的な平和の遺産を後世に残そうとした藤田の姿である。

さらに角田氏は、この礼拝堂が将来ユネスコ世界遺産に登録される可能性に触れつつ、藤田を「最後の浮世絵師」と称した。伝統的な日本美術の精神と、ヨーロッパ絵画の遺産とを見事に融合させた藤田は、まさに東西を結ぶ架け橋であった。ランスに描かれた宗教壁画は、レオナルド・ダ・ヴィンチやヨハネ黙示録に触発されつつ、彼の芸術人生を完結させた到達点といえる。

講演会の全文はこちら

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