ウォンテッドリー

ウォンテッドリー株式会社、仲暁子氏
<BR/>彼女の話を聞いていると、日本には無限の可能性があると思わずにいられない。日本最大のビジネスSNS「ウォンテッドリー」を立ち上げた32歳の若き経営者、その輝かしい才能に彩られた歩みを辿る。

あなたの世代と上の世代との違いは?
私たちはモノに囲まれた世代です。戦後何もないところから出発した祖父母や両親は、物質的な充足を追い求めて苦労してきたわけですが、その結果私たちの世代は、溢れるモノの中で充実感を見出せなくなってしまいました。ポスト産業主義時代の豊かな国に生まれた私たちは、自分だけのおもちゃやオブジェ、そして自分だけに提供されるサービスを求め、大量消費を拒否するようになった世代だと思います。

日本のスタートアップは、国内市場に閉じこもっているという批判が良く聞かれますが。
日本市場は巨大ですから、ここで誕生したスタートアップ企業はまず必然的に日本市場に集中します。英語が通じず、独特の文化や慣習を持つ日本の市場は外国との競争から保護されているわけですが、開業当初のこのような強みはすぐに足枷に変わります。楽天やサイバーエージェントのように外国に乗り出そうとしたスタートアップの試みは、いずれも失敗に終わっています。あくまで今のところ、ですが……

起業熱にとらわれたきっかけは?
リーマンショックが起きた時、私はゴールドマンサックスで働いていました。その後Facebookに入社したのですが、ここで強い衝撃を受けることになりました。Facebookはエンジニアが経営する会社で、カントリー・マネージャーはエンジニアの下に位置付けられます。あらゆる変化は、売り手や金融業界ではなく、エンジニアというカテゴリーから生まれるのだと理解しました。スタートアップを経営するのはエンジニアです。もう1つFacebookで知ったことが、いわゆる「ピボット」の重要性です。出発時のアイデアは99.9%あてにならないものですが、それを何とか使ってみようと試行錯誤していく中で新たな機会に遭遇し、これまでにない解決法が見つかり、やがては市場に適合した独自のビジネスモデルが出来上がります。Facebookでさえ、当初はある種の出会い系サイトだったわけです。私は2011年に起業、自分でもコーディングの基礎を学びました。現在ウォンテッドリーを利用している会員数は100万人、従業員は100人を数えます。弊社はLinkedinを超え日本最大のSNSに成長しました。

開業にあたり最も大変だったことは?
あの頃の自分なら「優秀な人材を集めること」と答えたでしょうね。世界中の企業が逸材を探し求めています。優秀な人材を獲得するためなら企業は多額の出費も惜しまないでしょう。しかし実際のところ、日本における最大の問題は解雇です。採用でミスすることはできません。私もウォンテッドリー立ち上げ時に採用で失敗し、非常に高価な代償を払うことになりました。

日本はスタートアップに有利な国になりましたか?
日本では、これまでスタートアップの波が3度ありました。第一にLivedoorや楽天が登場した90年代末、そして第二にDeNAやGREEが創業した2000年代半ば。現在は第三の波にあたりますが、スタートアップに対する見方はこの間に大きく変化しています。2008年に私が大学を卒業した頃、スタートアップに入社する人は負け組とみなされていましたが、今ではそんなことはありません。新興企業は、特にエンジニアに高い給料を払っています。また起業するサラリーマンも増えています。以前は起業の失敗や社会的地位の低下を恐れる妻に阻止(ブロック)されていたのですが……、経済誌を読んでいると、こうした現象を「嫁ブロ(ック)」などと称している記事に出くわしました! さらに企業の合併・買収も増えています。前の世代のスタートアップ(DeNA、楽天など)はその資金力を活かし、弊社のような企業の買収に乗り出しています。

政府からの支援を受けていますか?
政府の担当官から支援のご提案を頂きましたが、実際のところあてにはできません。公的な補助金を受けるため申請書の提出を試みましたが、あまりに多くの書類を用意しなければならず、これを記入するために専門の社員を1人雇用しなければならないほどでした

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