コルドン・ブルー 美しき日々

日本でのフランス料理の成功を証明するル・コルドン・ブルー

国際教育
「ニーハオ!」東京のお洒落な街・代官山にあるフランス料理学校ル・コルドン・ブルーのドアを押して、そんな声を聞くとは誰が想像するだろうか。その日、デモンストレーション教室から聞こえてきたのは、紛れもなく中国語だ。教室の4台のスクリーンには、日本人シェフの授業風景が細かく映し出され、通訳を介して中国人の生徒にフランス料理の極意を教えている。国際化の波がここまで押し寄せている。
フランス料理が日本で人気を博していることは、代官山のここ「ル・コルドン・ブルー」が証明している。「ネオ・クラシック」調のインテリアで飾れた学校の館内は、まるで沸騰した圧力鍋の中のような熱気に溢れている。22年前にアジアで初めて開校した東京校は現在、年間6000〜8000人の生徒(主に女性)を受け入れており、生徒数は年々増え続けている。代官山校はもはや「学校」の域を超え、菓子や料理、パンの料理教室の他に、ワインや紅茶、コーヒー、チーズなどの講座があり、さらに料理本の出版活動も行っている。建物内には、ブティックやカフェが併設され、フランス語、日本語、英語などが飛び交っている。
ル・コルドン・ブルーは、家庭料理の腕をあげたい主婦からレストラン業への転職を考えている会社員、さらには既にパティスリーで働いている見習い職人まで全てのニーズに対応するコースを用意し、シェフは技術面だけでなく、食材の特徴や栽培された土地の風土「テロワール」まで細かなレクチャーを行っている。地下の教室から「今日は、アーティチョークです!」とギヨーム・シエグレ・シェフの声が聞こえる中、生徒たちが一斉にカメラを構え、熱心にメモを取る。ル・コルドン・ブルー・インターナショナル アジア代表のシャルル・コアントロ氏は、同校の教育方法が独特であると語る。「生徒には予め食材の分量や用語集などの資料が与えられ、シェフが様々な話を聞かせますが、レシピを与えることはありません。レシピ(調理方法)とは、決まった手順に沿って作業を行うのではなく、調理前に様々な食材やその変換プロセスを理解することが重要なのです。」また、活躍中の有名シェフやブーランジェリー・シェフ、パティスリー・シェフを迎えるマスターシェフ講座も人気のひとつだ。

肥沃な土地
ル・コルドン・ブルーは、東京という「肥沃な土地」でより進化を続ける。
東京の食文化が高い評価を得ているのは言うまでもなく、ミシュランガイドがパリよりも東京に多くの星を与え、グルメという地図に東京を印した。東京には、ラーメン屋から懐石料理まで予算に応じたあらゆる価値観を満たす料理が共存する。日本人の食文化に対する好奇心は有名で、中でもフランスの食文化にとてつもない好奇心を抱いており、恐らくそれは世界でも日本人だけだろう。フランスのル・コルドン・ブルー本校で最初の日本人生徒を受け入れたのが1905年。時が経った2013年、日本人シェフたちはパティシエコンクール第2位やボギューズ・ドール料理コンテスト第3位、そして世界最優秀フロマジェ(チーズ販売の専門職人)コンクールで優勝に輝くまでに飛躍した。世界最優秀フロマジェコンクールで優勝した村瀬美幸氏は、現在ル・コルドン・ブルーの講師としても活躍している。「日本では、あるテーマに興味を持てば、思いがけない宝物を発見することがあります。例えば、我々の学校の近くには、イエメン産のコーヒー豆を専門に扱うカフェがあるんです!」とシャルル・コアントロ氏は興奮気味に話す。ル・コルドン・ブルーは、国際化が進んでいる。既に東京・代官山のキャンパスは、半数が日本人、半数が外国人である。「我々の今後取り組む課題のひとつは、日本の各地の食材に焦点をあてることです。日本政府は日本食材の輸出に力を入れたいとしていますが、日本のテロワールはまだ十分に知られていません。日本食材の認知度をあげるには、わかり易く紹介しなければなりません。我々は少しでも日本の役に立ちたいと考えています。」韓国では、既にキムチを取りいれた授業を開講しており、日本でも同様のことができるとコアントロ氏は考えている。

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