「ゼロ・エミッション」

日本はCOP21では「透明人間」だった。

「化石」ですらない
日本の政府関係者たちは、さぞ落胆しただろう。1999年以来初めて、パリで第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に参加するため派遣された同国代表団が、「本日の化石」賞を受賞しなかったのだ。これは、非政府組織(NGO)のネットワークである「気候変動アクション・ネットワーク」が、伝統的に、その日気候政策において前向きな姿勢を見せなかった国に対して、毎夜授与している賞である。今年は、ベルギー、オーストラリア、それにサウジアラビアが、この不名誉な賞を受賞した(サウジアラビアはそれをわざわざもらいに行き、儀式に参加するという謙虚さを見せた)。だが日本は、前回まで気候変動に関する大会議では決まってやり玉に挙げられていたにもかかわらず、それを受賞しなかった。2015年6月には、日本は三度もこのおよそ羨ましくない賞を受賞したことがある。
日本の交渉担当者たちは、この「忘却」が同国の取組みが力あってのものだと、一時信じることができたかもしれない。だが、日本の非政府組織「気候ネットワーク」が共同通信に説明したところでは、むしろ、今年はこの議論に対する日本の影響が無視するに足るものであったがゆえに、気候変動アクション・ネットワークはこの国を見逃したということらしい。もっとも、複数の日本のメディアの特派員は、COP21において自国の姿が見えないことを訝(いぶか)っていた。「日本は、同会議の成功に貢献もしなければ、その妨害もしませんでした。日本代表団は、インド、中国、米国という汚染大国が最終合意に参加するよう、説得を試みることに甘んじたのです」。COP21に出席した非政府組織の日本人代表はこう推測する。

中国
丸川珠代環境大臣率いる代表団の働きを援護する形で、政府は12月下旬、最も重要視していた各合意ポイントについての自らの意見を反映させることにひそかに成功していた、と主張していた。交渉団の長である政府高官、尾池厚之が、パリへ出発する前にすでに表明していたところでは、日本は、先進国・新興国を含め、参加国全体が、温室効果ガスの排出削減への取組みを最終文書の中で明確に数量化するということを望んでいたのである。
日本の交渉担当者がとりわけ希望していたことは、名指しこそしなかったものの、地球上で最大の汚染国である中国が、その削減努力を数字で表すことであった。それは、たとえそれが他のすべての国にとってと同様、まったくの任意であるとしても、である。というのも、パリで調印された合意は条約としての効力はもたず、各国の削減の約束は何ら強制力のあるものではないからだ。したがって、その約束の不履行があったとしても、それはいかなる罰則の対象にもなり得ない。「善意」の原則に賭けることで交渉担当者たちが期待しているのは、合意文書に削減目標を盛り込むことにより、各国政府がゲームに参加するよう促され、各国間での経済的捻(ねじ)れが生ずるのを避けることなのである。
日本政府が2030年には2013年に比べて排出量を26パーセント削減することを約束した背景にはこうした事情がある。2013年は、同国の全原子炉が停止し、従来型の火力発電所での発電量が増加したことから、記録的な排出量の年となった。

財政面では気前よく
新興国の方でもその取組みを明示するよう、これらの国々を説得するため、日本政府はすでにパリ会議開催前に、経済大国が気候温暖化と戦う経済小国のため導入した援助プロジェクトの最大の拠出国の一つとなることを表明している。こうして11月末には、安倍晋三は、2020年から毎年1兆3000億円、すなわち100億ユーロにのぼる額をこれらのプロジェクトに拠出することを約束した。これまで同国は、「気候変動援助」予算枠として約1兆円を見積もってきた。しかしながら、他の拠出国と同様、日本政府も、これらの金額の内訳を明確にしておかなくてはならない。というのも、そこには民間企業(特に再生可能エネルギー部門)による援助と、国の公共の援助とが、ともに含まれているからである。

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