フランス人が紹介する日本酒

フランス人が紹介する日本酒 数年前から、セバスチャン・ルモワヌ氏は日本酒の奥義への案内人である。行脚の成果を語る。

 海外で日本酒があまり知られていない理由はなんでしょうか ?
日本酒は、何のイメージもないまま外国に向けて輸出されました。あらゆる種類のアジアのアルコール類、それも質の低いものも含めて、すべて「saké」という表示で海外に広まったため、まずは、すべての事を明確にするところから始めなければなりません。一方、日本酒の世界は未だ複雑な領域であり、製造元は小規模で、リーダー的な商品が存在せず、ブランディングも消費者を啓蒙する戦略もありません。ただし、革新的な酒蔵、酒親善大使の活躍や情報発信のおかげで、徐々に状況は変わりつつあります。ムートン・ロートシルト氏は、アジアにおいて、ワインの啓蒙活動をムートン・カデ氏とともに行いましたが、日本酒の大手銘柄は同じことをしませんでした。しかも、日本酒の日本語で書かれたラベルは実際のブランド戦略もなく、ビンの裏ラベルもあまり記憶に残りません。海外に進出する酒蔵は、希望に見合う資金力があるわけでもなく、有望な取引先の言語もわかりません。さらに、ヨーロッパの市場で日本酒は、他のアルコール類、とりわけワインと比べて、比較的高価な商品とされています。日本とヨーロッパ間のロジスティックス(輸送)は、日本酒に関しては、あまり良く機能しているとは言えません。

日本酒は、ワインと同じ地位を築けないのでしょうか?
いいえ、日本酒は世界中のほとんどの料理にとって、見事に白ワインの代わり、時には赤ワインの代わりにもなります。

日本酒は、フランスのワインのように、日本国内でさらに話題になるでしょうか?
東京では頻繁に話題に上ります。ジャーナリストが話題にし、トレンドや流行についても取り上げます。この年頭には、大手メディアに、日本酒に関するシンポジウム、記事や特集が数多く取り上げられました。一方、地方では地元の商品、つまり地元で消費されるものにとどまり、あまり話題にはなっていません。

日本酒をまったく知らない人でもわかりやすいのでしょうか?
少し学べば、すぐに良い酒と悪い酒の区別ができるようになります。ただし、私が日本酒好きにした人たちもそうですが、すぐに言語の壁にぶつかります。日本では、漢字を習得しない限りは、本醸造を、純米や吟醸と区別することは容易ではありません!

日本酒を熟成させるために、保存しておくことはできますか?
多くの日本酒は可能ですが、実際には生産者や販売者が勧めているわけではありません。彼らは購入したらすぐに消費することを勧めています。実際のところ、日本酒の生産者を理解するために、もっとも比較できるものは、ワインではなくシャンパンです。シャンパン生産者は、毎年同じ商品を、同じボトルで販売することを心がけています。日本酒生産者の精神は、まさにそれと同じなのですが、なかには貯蔵室で十分に寝かせた日本酒を販売している酒造所もあります。

産地は、ワインのように日本酒でも重要なのでしょうか?
以前ほどではありません。かつて日本酒は、地元で生産され、地元で消費されていました。地元の料理に合わせ、その地と密接に結びついていました。現在はそうとは限りません。日本酒は、水、米、酵母から造られていますが、米と酵母については、例えばブドウに比べてはるかに容易に移動させることができます。

海外進出に最も意欲的な酒蔵と思われる「獺祭(だっさい)」の努力をどう思われますか?
獺祭は日本酒の世界に改革を起こしたといっても過言ではありません。自社商品を最高レベルに位置づけるために、すべての製品を規格化し、少量の銘柄で、高品質の酒造りを実現しました。

日本ウィスキーの絶大な人気は、日本酒にとっても見事なお手本になりますか?
私はそうは思いません。ウィスキーは比較的シンプルな世界で、代表商品にブランドを付けることができる大手企業グループが背景にいます。日本酒は、多くの銘柄がある一方、ウィスキーは欧米の消費者にとって完全に馴染みのある飲み物です。高品質の日本産ウィスキーは、強いブランドを打ち出す力がある大手企業グループで、かつ銘柄はわずかです。さらに、日本のウィスキーは、まさしく、欧州や米国が良く知る「ウィスキー」であり、よって理解されることも、受け入れられることも、日本酒よりは明らかに容易なのです。

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