ワインの次はチーズが大人気

フランス全国酪農経済センター(CNIEL)の広報部長ロラン・ダミアン氏は、フランス産チーズが日本市場で今後10年間成長し続けると予想する。

日本市場の位置づけは?
年間10,000トンのフランス産チーズを輸入している日本は、欧州以外では米国に次ぐ第二位の市場で、年20%の勢いで成長しています。20年前、日本人にはチーズを食べる習慣がありませんでしたが、状況は変わりました。近頃のチーズ人気は、ワインブームの後を受けて到来したものですが、チーズ人気が沸騰する中、フランス産チーズは現在、高級品として認知されています。現在、日本のスーパーのチーズ売場の約6割がフランス産チーズですが、工場生産のチーズの輸出に成功すれば、さらにこの先10年は成長が続くでしょう。

日本市場は、他と比べて特に閉鎖的?
これは簡単な問題ではありません。各種規制や関税率(チーズにかかる関税は35%)、さらには流通上の障壁があります。バターに至っては、なんと320%もの関税がかけられています! その点、韓国の市場はより開放的です。5年前200トンだった韓国への輸出量は、今ではなんと2,700トンにまで伸びました。あと5年も経てば、韓国での消費量は日本に追いつくのではないでしょうか。

日本で、チーズ価格を大きく下げることは可能?
意図的に「高級食材」を軸にした戦略を掲げているわけではありませんが、日本におけるチーズ価格は今後も高止まりでしょう。流通システムの中には今もなお数多くの仲介業者が存在しており、こうした構造が最終製品価格をつり上げています。一方で米国では、チーズの大衆化が進んでいるのも事実です。

日本­­の顧客ターゲットは?
日本市場の大きな利点は、日本人にはチーズの味に対する抵抗が少ないということです。一方中国人やタイ人は、フランス産チーズが苦手のようです。日本や韓国など醗酵食品の長い歴史を有する洗練された国では、フランス産チーズもすんなりと受け入れられるというわけです。私たちの顧客は、大まかに言えば日本的な順応主義から脱却したいと考える人々で、具体的には女性が中心ですが、自由な考えを持ち享楽の追及に目覚めた45~50歳の男性なども含まれます。例えば、どちらかと言えば男性的なメディアである朝日新聞で、最近チーズが紙面に登場するようになるなど、かつてない新たな展開が見られます。また、チーズを使ったいわゆる「創作」和食料理の台頭も、これまでにはなかった新しい流れです。カマンベールやコンテを寿司に取り入れるシェフも登場しました。日本には熱烈なチーズ愛好家がいます。パリのリシュリュー通りには、日本人が経営するチーズ専門店も登場しました。

広く愛されるキリ(Kiri)のチーズ

フランスで「キリ」を知らない人はない。この仏チーズブランドは、日本国内のチーズ関連産業においても欠かせない原材料の1つとなり、関係者の間でもその知名度は高まるばかりだ。キリ・ブランドの販売を手掛けるベルジャポン(Bel Japon)株式会社 代表取締役の大高寛氏は,「インテル社製のCPUを搭載したパソコンが『Intel inside(インテル、はいってる)』というキャッチコピーで宣伝・販売されていますが、我々の場合はまさに『Kiri inside(キリ、はいってる)』です。」2000年からは菓子職人を対象とする「キリ・コンクール」を開催(最優秀賞受賞者にはグループの工場見学を含むフランス研修旅行を贈呈)するなど、同ブランドはさらなる知名度アップに取り組んでいる。一方で、キリの名前は、一般消費者にも徐々に浸透しつつある。キリは、「日本におけるフランス年(1998)」以降始まったフランス産品ブームの恩恵を受けた。「1999年から2003年にかけて、当社の売上は2倍に増えました」と大高氏は当時を 振り返る。「日本では、子供向けの分かりやすいイメージを打ち出した従来のPR手法を取りやめ、高級感と、フランス産であることを優先的にPRすることにしました。」現在、直接販売(消費者向け販売)が売上高全体に占める割合は、2005年の50%から70%まで増加した。ベルジャポンは、仏で有名なチーズ「アペリキューブ(Apéricubes)」の日本版「ベルキューブ」の販売に際しても同じ戦略を採用し、成功を収めた。「日本のチーズ市場でのシェアはまだ約3.5%ですが、スーパーなどの販売スペースで当商品が占める面積率は10%に達しています。当社はその市場占有率の実に3倍に相当する商品陳列スペースを確保しており、このことは当社製品に対する評価の高さを証明しています。」これはベル社製品がありとあらゆる障壁を乗り越えた末に得た成功であり、注目に値する。「当社のチーズ製品には40%もの関税に加え、チーズの輸送と保管に要する物流経費が かかります。現在、日本国内で生産する可能性を模索しています」と大高氏は今後の展望を語った。

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