信元久隆氏が語る「門戸を開いた日本の自動車メーカー」

曙ブレーキ工業株式会社代表取締役社長 信元久隆氏いわく、自動車メーカーの業績は好調だが、自動車部品メーカーは必ずしも好調ではなく、現状に満足してはいけない。

系列というシムテムは今日も継続しているとお考えですか?
自動車業界は、大きく変わったと言えます。日本の自動車メーカーは、多くの欧州のサプライヤーに交渉の門戸を開きました。その結果、競争はかつてないほど厳しいものになっています。しかしご承知の通り、系列自体は悪いことでもないのです。まさに、日本の自動車業界の歴史を反映しているのです。大手自動車メーカーがビジネスを開始した頃、彼等にはサプライチェーンがありませんでした。ですから部品サプライヤーを育成するために、資本面を含めて様々な協力をしたのです。時が経つにつれて、部品サプライヤーは自動車部品に関して自動車メーカー以上に豊富な知識を身につけました。今日変化したことは、部品メーカーが系列の外にも目を向けなければならないと自覚したことです。つまり、新規顧客を開拓し、海外にも門戸を開かなければ、生き残る道はないということです。

今後、大手インターネット関連会社と部品メーカーが協業を進めていくとお考えですか?
そうは思いません。我々の仕事において、「安全」は大変重要な要素です。インターネット業界における「安全」よりもはるかに重要です。二つの業界の接近が考えられる唯一のケースは、短い距離を、特定の目的地へ向けて走行するよう予めプログラムされた自動車に限られるでしょう。

日本の自動車部品業界は韓国や中国の工業界に追いつかれ得ると思いますか?
その可能性はあるとは思いますが、彼等が我々に追いつくにはまだ時間がかかると思います。重要なのは、日本の部品サプライヤーが新興国が追ってきていることを自覚しているか否かです。もし自覚していれば、その会社は生き残れるでしょう。

円安は御社にとって優位に働きますか?
一般的には円高の方が望ましいです。確かに海外に生産拠点がありますが、日本国内でも多くを生産していおり、国内における高い原材料やエネルギー価格に対応していく必要があります。しかし、これらの価格は円が低く評価されればされるほど、高騰してしまいます。一方、自動車メーカーは円が弱い方が好ましいと思っています。

部品メーカーは自動車メーカーに対して次第に力を持ってきたと感じていますか?
部品メーカーの交渉力が以前に比べ強くなってきたと思います。自動車の生産台数が「リーマンショック」前の水準を超え、自動車メーカーは部品不足に陥ることがあり、それが部品メーカーの立場をより強くしています。自動車部品メーカーのTRW社がゼネラルモーターズとの7億ドルの契約を、条件が合わないとして蹴ったことは前代未聞のことでした!

いつか部品メーカーが自動車メーカーになることは想像できますか?
(沈黙)判りませんね。部品メーカーと違って、自動車メーカーはマーケティングや投資を管理したり、とりわけユーザーからの際限ない数々の要求に応えたりしなければならないのです。これは部品メーカーとは異なる仕事ですから。

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