「化石(燃料)たちはしぶと く生き残る」

日本のエネルギーミックス(エネルギー源比率)には、この国の矛盾が凝縮されている。問題を再検討してみる。

石炭に手を染めて
これは、日本の口外できないエネルギーミックス調合の秘密だ。福島の事故後に原子力を手放して以来、この国の石炭供給割合は25%から30%へと増えた。だが、このエネルギー源は著しく汚染度の高いものである。「きれいな石炭、ということが言われますが、今後2030年までにいかなる進歩があろうとも、石炭は著しく汚染度の高いものであることに変わりはないでしょう。最先端のテクノロジーをもってしても、キロワット時当たり400グラムの天然ガスに対して、石炭はキロワット時当たり700グラムの二酸化炭素を排出します。また、二酸化炭素の捕獲技術もうまくいきません。たとえそれがうまくいったとしても、この厄介者の二酸化炭素をどこに貯蔵するのでしょう。水中でしょうか?私たちは、核廃棄物について直面するのと同じ問題へと立ち戻ってしまうのです」世界自然保護基金(WWF)の山岸尚之はこう説明する。もう一つの問題は、4月からの電力業界の規制緩和だ。これにより、新規発電企業の参入が可能となるが、こうした企業は、化石燃料の中で最も安価な石炭を用いる誘惑に強く駆られることだろう。脱原子力を選択したドイツも、やはりその石炭への依存度を高めている。さらに悪いことには、日本の複合企業体(とりわけ、日立、IHI(旧石川島播磨重工)、三菱重工)は、石炭利用エネルギー生産技術の第一人者であり、その革新的テクノロジーを発展途上国へ輸出しようとしているのだ。政府は、国際協力銀行を通じてこれらの企業を支援している。

原発再開という仮説
再開か?再開しないのか?世界で最も原子力推進派である国の一つに「フクシマ」が及ぼした甚大なショックは、原子力産業の存在をあと一歩で失くすところであった。安倍晋三は、ここ数ヶ月間、思い切った承認手続きを経ることで、原子力部門の再開を図ってきた(川内原発再始動の申請書は20,000ページにおよぶ)。政府は今後2030年までの間に、エネルギーミックスにおける原子力の割合を20から22パーセントへ引き上げることを計画しているが、現状では、そのレベルに達することは不可能だ。「20パーセントというのは単なる数字です。経済産業省は、どうやってその数字を達成するかを説明していないのです」元国際エネルギー機関事務局長、現在の笹川平和財団理事長である田中伸男は驚く。一橋大学の橘川武郎の説明はもっと細かい。「今から2030年までだと、築40年未満の原発はわずか20ヵ所になります。それらがすべて稼働してるとしても、エネルギーミックスにおける原子力の割合は15パーセントにすぎません。20パーセントに達する唯一の方法は、原発の新規建設か、既存原発のいくつかの寿命を延ばすことです。それが政治的に可能でしょうか?そうは思えません」橘川はこう考える。

ガスは満タン
日本は、ずっと前から液化天然ガス(LNG)の最大輸入国である。しかし、福島の大事故と、原子力発電の突然の停止以来、その食欲はさらに増大している。「福島の大事故は、カタールの天然ガス生産が著しく増大しつつあったときに起きたのです」トータル社の天然ガス部長ロラン・ヴィヴィエは、『フランス・ジャポン・エコー』のためにこう分析している。この食欲は、今後数年間衰えることはないだろう。石油価格と連動している天然ガス価格はここ数年下落しており、日本にとって、この資源はより入手しやすくなっている。日本は、二酸化炭素排出量削減のためにも、液化天然ガスを使うことができる。「天然ガスの二酸化炭素排出量は、石炭に比べてキロワット時当たり2分の1です。ですから、環境政策を講じている諸国の中では、我われは有利な位置にあります」ロラン・ヴィヴィエはこう説明する。さらにまた、液化天然ガスは、断続的にしか生産されない再生可能エネルギーの代替物ともなるものだ。

やはりもうちょっとだけ石油を
今日、日本の依存原料比率において、石油は15パーセントを占めている。同国のエネルギー源において、この「黒い金」がゆっくりではあるが確実に主役の座からしりぞいていることを考えれば、異常事態だ。二度の石油ショックがトラウマとなった日本は、とりわけ天然ガスと核エネルギーを優先させることで、石油の使用を削減する公式政策を採用することになった。例えば2010年には、石油は発電において7.5パーセントしか占めていなかった。もっとも、確かに「フクシマ」は同国のエネルギー原料に石油を復帰させることを余儀なくさせたが、同国はそれでもその依存度を引き下げようとしている。今後2030年までに、政府は石油依存度を3パーセントまで下げることを目標としている。

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