「政府には野心が足りない」

日本の野心は不十分、とWWF Japan 気候変動・エネルギーグループリーダーの山岸尚之氏は述べる。

環境問題に対する日本の姿勢をどう思いますか?
COP21で日本は、2030年までの温室効果ガス排出量削減目標として、2013年比26%、1990年比18%を提案しました。しかし科学者たちは、地球の温度を2度下げるには1990年比50%の削減が必要だとしています。さらに、基準年をアメリカの2005年やEUの1990年とせず2013年とすることも問題です。ここに、野心のなさを隠したいという政府の意思が明らかに見えます。2013年は日本の温室効果ガス排出量が最大となった年ですから。

もうひとつの問題は、日本政府の気候変動問題解決への意志の欠如です。
きちんとした炭素排出量取引制度を確立したのは東京だけです。全国レベルでは産業部門別のCO2排出削減プログラムがあり、任意ベースで経団連が主導しています。国が経済に制約を課す環境政策を施行しないよう先回りして、経団連はこれまで独自のプログラムを打ち出してきました。しかし、最悪の事態はこれからです。4月には電力市場が自由化され、中小企業など新規事業者が参入します。CO2排出削減目標は考慮されず、コストが安く販売が容易な石炭火力発電が増えるでしょう。少なくとも、売り手寡占状態においては、政府は電力産業をもっと統制・主導できたのです。

現政権の環境問題への取り組みをどう評価しますか?
安倍首相は、経済改革と憲法改正が最優先と常々表明しています。ただ、環境省はどちらかと言うと我々の声に耳を傾けてくれます。経済産業省は反対する傾向にあります。

福島第一原発の事故のあと、政府は太陽エネルギーからの電力買取価格を非常に高く設定しました。これは間違っていたのでしょうか?
確かに高額すぎたと思います。しかし、太陽エネルギー関連産業には支援が必要でした。福島の事故以前は、エネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合は極端に低かったのです。

2030年目標は達成されると思いますか?
産業界はこの目標に満足しており、自由民主党はこれからも長く政権の座にあるでしょう。ですから、達成されると思います!

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